04.スキンシップ
とりあえず、ここまで来て引き返すと言うわけにもいかない。
身体を流すだけ流して、さっさと出よう。
ゆっくりと湯船に足を入れてゆく俺を見ながら、
「
「いや、丁度いいよ。浴室自体がスチームサウナみたいになってるし」
胸元まで湯に浸かると、湯面が落ち着くのを待って、リリスが目の前をクロールで横切って行く。海では泳ぎを見られなかったが、なかなか綺麗なフォームだ。
反対側まで辿り着くと、プハ――ッと
海で着ていたのと同じく、黒いビキニスカート。
フリルなど余計な飾りのないコンサバティブなデザインが、逆にリリスの幼げな容姿を引き立てている。
海では上から見下ろしているだけでなんとも思わなかったチビボディだけど、すぐ目の前で躍動されると、思わずドキッとさせられるもんだな。
「なぁに? じろじろと……」
「い、いや……なんかボオ~ッとしてて……」
慌ててリリスから視線を外すと、今度は華瑠亜と初美の二人が視界に収まる。
同じタオル巻きスタイルでも、温泉番組に出てくるアイドルにはまったく何も感じないのに、一緒の湯船に浸かっているだけでこうまで破壊力が違うものなのか!
初美は恥ずかしいのか、のぼせそうな顔で肩まで浸かっているのでまだいい。
困りものは華瑠亜だ。
両
同級生の中では大きめの華瑠亜のバストが、ぴっちりと巻かれたタオルから零れるように盛り上がり、中央でくっきりと深い谷間を刻んでいる。
瑞々しい胸元は
華瑠亜を女子として意識したことはないが、そうは言ってもこの状況になれば、気にするなと言う方が無理だろ!?
いくらタオルで隠しているとは言え、もうちょい恥らえよ!
「なに縮こまってんのよ?」
足を
「せっかく広い湯船なんだし、足伸ばしたら?」
「あ、ああ……」
そうは言っても、三人で足を伸ばしたら――。
二人の足に触れないよう、不自由な体勢になりながらも隙間を狙ってそろりそろりと足を伸ばしてゆく……が、ほら触っちゃった!
直後、不意に華瑠亜が、俺の足に重ねるように自分の足を移動させる。
「ひゃうっ!」
思わず、奇妙な声が俺の口を衝いて漏れてしまう。
「何よ、変な声出して。足重ねるくらい、いいでしょ?」
「あ、ああ、うん……」
この世界の女子は、こういうスキンシップに対してあまり抵抗感がないんだろうか?
それとも、華瑠亜が単にオヤジ気質なだけか?
それにしても……自分でも意外だった。
一緒の湯船に入ればそりゃ、腕なり足なりが触れるくらいのことがあるのは予想していたが、それくらいでいちいちドキドキするなんて考えてもいなかった。
お風呂と言うシチュエーションが加わっただけで、体の一部が触れるだけのことが、こんなにも破壊力を増すなんて……。
いや、違う違う!
そもそも、水着着用の予定だったから俺もOKしたんだ。
想定外のことが起こった時点で、一緒に湯船に浸かることは断念すべきだったのに、テンパッてそこまで頭が回っていなかった。
「どうしたの紬くん? なんか、体勢がおかしくない?」
リリスが不思議そうに小首を傾げる。
最初の不自由な体勢のまま固まってしまったため、体が変な角度に傾いたままだ。
足が重なってしまった今、この、広背筋がツリそうな姿勢に全く意味はない。
「ああ、ちょっと……待って」
上半身を真っ直ぐに立て直すのと同時に、動く足。
当然、触れている部分が湯船の中で擦れ合い、その刺激にまた心臓が高鳴る。
お湯の中とは言え、華瑠亜の
「水着同士ならさ、家でも一緒に入れるね!」と、無邪気に話すリリス。
「家でも水着で入るなんて、俺は嫌だよ」
「別に、紬くんは着なくたっていいじゃない」
「いいわけないだろ!」
……とは言ってみたものの、ついつい裸の俺と水着リリスの入浴風景を思い浮かべてしまう。
相手の裸を一方的に見るのとは逆に、自分の裸を一方的に見られる状態。
何プレイと言うのか分からないが、それはそれで、なんだか別の世界が開けていきそうな気がする……。
そんな事を考えながらボ――ッとしていると、
「いやらしっ!」
華瑠亜の一言で我に返る。
気が付けば、俺を見据えながら冷ややかな表情を浮かべている華瑠亜。
「な、なんだよ? なにも言ってないじゃん」
「なにか言ってるのよ、顔が! …… ねぇ初美?」
お湯に口元までとっぷりと浸かったまま初美も頷く。
知らないうちに、
それにしても初美、さっきの倍くらい顔が赤いぞ?
大丈夫か?
「俺、ちょっと体洗ってくるわ」
このまま浸かっていてても、緊張のせいで、心も体も一向に癒されそうにない。
もう、体だけ洗ってさっさと出よう。
手桶にお湯を汲み、湯船から少し離れてシャツを脱ぐ。
幸い浴室の中は
持ってきたタオルに浴室の石鹸を使って泡を立て、体を洗う。塩分でペタついていた肌がツルツルに変わっていくのが気持ち良い。
やはり七部袖を着たまま湯船に浸かっただけじゃサッパリできないよな。
足先まで丁寧に擦り、ほぼ全身を洗い終わった時……ふと、背後で人の気配を感じて振り返る。
手桶を持って立っていたのは……。
華瑠亜だった。
濡れたタオルでくっきりと強調されたボディラインに、思わず
「お、
「せ、背中でも流してやろうかと……思って……」
絶対に嘘だろう。華瑠亜がそんな殊勝な行動を取るわけがない。
おおかた悪戯でもするつもりで近づいてきたんだろうが……。
まあ、理由はどうでもいい。
問題は、
「その傷……あの時の……」
華瑠亜の声が
戦闘実習で華瑠亜を助けた時に負った傷――ダイアーウルフの歯型だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます