21人目 個人経営        ★★★★★

 幼少。物心ついたくらいの頃だった。

 個人経営のスーパーが実家の近くにあった。

 最初の頃、お客は入っていた。

 私も母親に手を引かれ、よく買い物に行ったものだ。

 店長か、オーナーか。とにかく店員も優しい人ばかりだった。


 ある時、私は牛乳のおつかいを頼まれた。

 そのスーパーへ行き、冷ケースから無作為に牛乳パックを取り、お金を払った。

 帰宅して飲んだそれは、『苦味』というか『渋み』というか――

 とにかく今まで口にした牛乳の中で、最も不快な味だった。

 何事か? 牛乳パックの上部を見ると、消費期限が二ヶ月も過ぎていた。


   * * *


 異変に気づいた頃から、そのスーパーは徐々に衰退していった。優しかったオーナーの姿が、いつ行っても見えなくなった。棚から商品が減ってゆき、消費期限切れの商品が目に余るようになり、あれよあれよという間にスーパーは潰れてしまった。


「なんであの店なくなっちゃったの?」

 私は幼心に気になり、親に聞いてみたが、

「さあ。なんだろうね……」

 なにもしらない様子だった。いや、知らないフリだったのだろうか。


 ――のちに、オーナーは宗教関係で金がなくなってしまい、店を畳んだと知った。

 その宗教の名は、オウム真理教だった。


                                   了

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