18人目 趣味=バイクの教官   ★★☆☆☆

 何度も転がしてごめんね、CB400SF-Kちゃん! キミの傷は無駄にしない!

 はい、今回はバイクの話です。

「重くて起こせないし、どうにか起こしたら全身筋肉痛。もう免許取れんわ……」

 初っ端、倒れた400ccを起こす段階で絶望。

「あ、ギアチェンジできん。これじゃ公道なんて走れん、もう免許取れんわ……」

 さらにクラッチの操作が下手で、シフトチェンジの際にエンストして自信喪失。

「あぁ……怖っ、時速40㎞ってこんなに速いの……? もう免許取れんわ……」

 挙句、直線は三速で走るように言われ、調子に乗ってアクセルを吹かして萎縮。


   ✽ ✽


『バイク』と一言で括っても、世間のイメージは様々です。

 例えば、『せまるー、ジョ〇カー』を歌うヒーロー。

 あるは、うるさい、邪魔、マナーが悪い――『おめえ、どこ中だよ!』

 バイク乗りには、後者に挙げたような負のイメージがつきまとい続けます。それを顕著にしているのが、チンパンジー並の知能指数を持ったDQN(チンパンジーに失礼)の空ぶかしや、『バカスク』のすり抜けが原因だと断言します。

 ――断言します。


 ちなみに『バカスク』とは、

『AT限定で車の免許を取った奴が、チャリ感覚で公道を走らせているスクーター』

『金がなくて50ccしか買えない、判断能力が著しく低い大学生が乗るスクーター』

『年寄りが運転するスクーター』

 のような『バカなスクーター』のことを指します。ちなみに、これらに定義される奴らは全員、半ヘルを被っています。異論は認めません。

 ――認めません。

 こういった、ろくでもないバイク乗りが世の中に溢れているせいで、まともなライダーまで日陰に追いやられているのが現実です。


   ✽ ✽


 時を戻そう。

 教習所で中免(今は普通自動二輪免許)を取得する際には、運転はもちろん、そのほかに室内で行うオートバイのシミュレータ――端的に言うと、

『操作性がメッチャ悪いバイクのゲーム』

 も、教習の一環として受けなくてはいけません。それも計三時間も。


 私は一回目のシミュレータを終えたあと、様々な技術を学び、二度目のシミュレータを迎えました。その日は男性ふたりのみの寂しい教習で、部屋で待機しながら、

『やだねー、アレ。今度は二時間も乗らないといけないのかー』

 なんて世間話をしていると、背の小さい、飄々としたオジサン教官が颯爽と登場。早速教習を始めるのかと思えば、おもむろにバイク雑誌を取り出し、

「エエわエエわ、そんなんやらんでも」

 と、まさかのシュミレータ放棄。目を丸くする私たちを尻目に、

「キミら一回やっとるもんで、何度もシミュレータやっとっても変わらんって。え、コレやりたい? やりたくないでしょー? それよりキミら、買うバイクはもう決めとるん? なに買うの?」

 シミュレータを完全にほっぽり出し、雑誌を開いて、活き活きしながらバイクの話を始めるのです。


 これに対して、一緒に教習を受けていた男性が口を開きました、

「ボクこれ酔うんで……こないだほとんどやらなかったんです」

 シミュレータ放棄に拍車をかける一言を。こうなった以上私は、

『ちゃんとシミュレータ教習やりましょうよ!』

 なんて主張するのは誤りだと悟ります。こちらも長いものに巻かれろ精神で、

「レブル250に乗りたくて教習所に通ってまーす!」

 なんて風に、教官のバイク談義へ完全に乗っかりました。雑談で二時間が終わるなら、願ったり叶ったりというもので。隣の生徒もどこか表情が和らいでいます。

「あぁ、最近モデルチェンジしたやつね。確かこのカタログに――」

 しかもこのオジサン、最近の車種にも詳しい。やはり教官はバイク好きが多いようで、雑誌をパラパラめくり目を輝かせ始めます。「これニーハン?」とか「足つき良さそうやね」とか、もはや完全に少年の顔でした。

「僕は最近ずっとカワサキに乗っとるよ。HONDAのバイクは性能エエけど、いかんせん優等生過ぎてつまらんでなあ。あと最近ウチの若いのは、みんなしてオフ車乗っとるもんで。あれ、僕だと足が届かんのよ……ハハハっ!」

 こんな調子で一時間目が終了。休憩を挟み二時間目の教習、


【教官がこれまで行ったお勧めのスカイライン】


 が始まりました。シミュレータの画面に映るスクリーンセーバーが寂しげです。

 どうやら近場だと三ヶ根さんがねスカイライン、三河湾スカイライン。少し足を延ばすなら箱根スカイライン、伊豆スカイラインも捨てがたいらしいです。遠へ行くなら、やはり北海道の――

 話が、どうにも止まらない……。一緒に教習を受けている男性は、どこか表情が引きつっていました。

 こうして、さんざバイク知識をしゃべり倒して、

「あ、もうこんな時間か……。じゃあ、最後にビデオだけ観て終わろうか……」

 名残惜しそうに、それでもきちんと、公道および高速道路での心得ビデオの解説をし、『お疲れさまでした』。


 ありがとう、『趣味がバイク教官』のオジサン。

 あの談義のお陰で、卒検は一発合格だったよ(プラシーボ効果)。


 では最後に、教官のありがたい格言で締めます。

『高速でバイクの二人乗りをすると、十中八九うしろの人は寝る!』


                                   了

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