15疋目 かまいたち       ★☆☆☆☆

ひきって言っちゃったし』

『サブタイが胡乱うろんだし』

 そう思った方、正解です。私が幼稚園くらいの時の出来事deathです.


   ✽ ✽


 昔、実家の近くに、近所のガキんちょとか、その保護者とかが集まる集会場があたんです。で、大人たちは情報交換をして、子供たちはバカみたいにはしゃぎ回り、毎日のようにそこは機能していました。

 ある日。集会場に来ていた親子が、うち以外に一組しか居ない日がありました。一緒に来ていた子供も女の子だったので、私はひとり外に出て、付近をウロウロしていたんです。

 集会場の前は駐車場として三、四台の車が止められるスペースがあり、そこで石を拾ったり投げたりして時間を潰していました。そのうち、茶トラの野良が車の陰から姿を現し、私は好奇心から近づいていったんです。

 ですがネコの性質上、すぐに逃げられてしまい、停まっていたセダンの向こう側に行ってしまいました。


 幼心に、これ以上追ったら逃げられてしまう――そう思い、セダンの下から向こう側を覗くと、先ほどの茶トラもこちらをじっと見据えていたんです。

 一台の車を隔て、覗きこむ一疋と一人。

 おいで、おいで――なんて、私はバカみたいにネコを呼んでいたのですが、目を細めるだけで、ネコは一向に相手をしてくれません。痺れを切らした私は、あのモフモフを味わいたくて手を伸ばしました。

 その瞬間、ネコが前足にスナップを付与し、到底人間では反応できないスピードで攻撃の動作をしてきたんです。が、車を隔てている以上、体の小さい両者が、前足と手を伸ばし合っても触れ合えない距離です。

 ――だのに右手の甲に謎の痛みを覚え、咄嗟に手を引っこめました。すぐその部位を見ると血が滲んでおり、痛いような痒いような感覚が広がってゆきました。


『うわああぁん! いだいよぉー!』


 バカみたいに喚く幼少の私は、ネコに背を向けて集会場へ逃げ帰りました。 

 なんと私は、ネコから【奥義・かまいたち】を食らったのです。

 あの有名な【かまいたち】です。よくフィクションで使われる技です。

 ミドルレンジから攻撃を食らうなんて、【かまいたち】以外にあり得ません。

 てか、鎌なの? イタチなの? ネコなの?


   ✽ ✽


 はい、そんなの過誤かご記憶だとおっしゃるのでしょう?

 そうです。あまり冷静にツッコミを入れられると、私は返す言葉がありません。

 シティ大学の心理学者、マーク・L・ハウさんによれば、神経科学と行動学の観点から、幼少期の体験に関する人間の記憶を信じるのは誤り、とのことですし。


 でも確かに引っかかれた爪痕つめあとがあり、手当もしてもらったんです。

 本当になんだったんだろう……。ともあれ、変人ならぬ変猫――forever!!


                                    了

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