10人目 恐怖の栗おこし     ★★☆☆☆

 これはー、あたしの友人の話なんですがね、家庭が貧しくて、お菓子なんて滅多に家で出なかった子が居たんですよ。

 仮にこの方を、Bachバッハさんとしておきましょうか。

 Bachさんは食い意地があって、あたしの実家に来ちゃぁ、テーブルのお菓子を、美味しいなあ美味しいなあ、なんて言って貪るんですよ。


 中学の頃です。いつものようにBachさんが、「こんちはー」

 うちに遊びに来たんですよ。ぎぃーっと、玄関の戸の音が聞こえる。

 ――あぁ、入っておいでよ。

 あたしが居間で待っていると、Bachさんがスーッとスーッと、こっちに来るんですよ。あたしはねえ、この時いやーな感じがしたんだ。

 で、居間に入るなりBachさんは、テーブルの上に置かれた、掌にちょこんと乗るサイズの【栗おこし】をターゲティングするわけですよ。


 やだなーこわいなー。あたしが思っていると、フィルムを剥がして一口、二口――

 もう食べ終えたんです……。

 そう、一口がデカイんですよ。


 で、Bachさん。感想もなくテレビゲームを始めるんです。ところが、いつもは対戦で騒ぎ合うのに、今日は妙ぉーに静かなんだ。それどころか、Bachさんのゲームの操作がおぼつかなくなってくる。変だなあ変だなあ。

 私はアレっ、と思ってBachさんの顔を見ると、冷や汗がファーッっと吹き出していたんです。

 うわあああぁ! コイツ、この世の者じゃない……! 真っっっ青な顔をした落ち武者のようなBachさんは、ただ目だけ開けて、じーぃぃっとテレビを眺めている。

 段々、段々――Bachさんの口数も減ってゆくうち、ついにコントローラを畳に置いたんです……! すると苦しそうにしていたBachさんが一言、

「腹が痛い……」

 と遺言を漏らし、ぶっ倒れてしまったんです。


 不思議なことに、Bachさんが【栗おこし】にあたった原因は未だにわかっていないんです。ひとつわかるのは、それ以来Bachさんが、【栗おこし】に拒絶反応を起こすようになってしまったことのみ。

 あるんですよね、こういうことって……。


 実績解除

【恐怖の栗おこし】


                                   了

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