7人目 野外プレイ【下】    ★★★★☆

「おい常陸乃! なんつータイトルつけてんだよ!」

 と、どやされても仕方がないです。

 でも事実なんです! た、たまたま見ちゃったんです! 被害者なんです!

 それでも僕を責めるんですか!(カバートアグレッション)


   ◇


 時は平成半ば、深夜の帳がとばり下りた実家のキッチン。

 夜食を食べ終えた常陸乃少年、ふと台所の窓を開けると、

「アンアン、アンアン」

 野外で響く女の喘ぎ声。これに飛びつく、思春期の常陸乃少年。

 そりゃあもう、ギシアンに聞き耳を立てる童貞と同レベル。

 さて、声が聞こえるがどうしたもんか。夜も遅いしあすは学校――いや、ままよ!

 靴を履いた常陸乃少年、そっと家を出て声の方へと歩んでいった。


 夜気を感じると、女の声も強くなった。

 どうやら声は、近くの陸上競技場が発信源の模様。

 一歩、また一歩――そのつど大きくなる、女のピンクな喘ぎ。

 声がクリアになりつつある陸上競技場外周。

 付近に目を配り、そのひさしの下へ目をやる常陸乃少年。

 すると暗がりに動く黒い影。


 目を凝らしてみると、なんとそれは尻をついて壁に寄りかかる女のシルエットだった! 人影はもうひとつ――女の前に立ってナニかをする、男のシルエットときたもんだ。あゝ、これは……!

 興奮冷めやらぬ時、男と目が合ってしまった常陸乃少年。

 ――時が止まった数秒間。

 いそいそと服を直し始める、全身黒タイツさん。


 位置について――よーいスタート! 

 常陸乃少年、いの一番に逃げた!

 ブラブラするイツモツをしまった男、やや遅れて追ってくる!

『たまたま、タマタマ見ちゃってごめんあそばせ。おふたりは、競技場を警備してくれてたんですね。シモの警備はゼロだけど』

 常陸乃少年、必死に心の中で謝るが誠意は伝わらず。残念。


 とはいえ、やはり地元民は強い。地の利は我にアリ。

 夜風を切り、スイスイ暗闇を駆け抜け、競技場の外周をぐるりと半周。

 アオカン野郎、追いつけるか? いや、常陸乃少年が速い!

 おっと、ここでアオカン野郎のペースが落ちた。距離を取られすぎて諦めたか?

 さあ常陸乃少年、引き離すように行きとは別のルートへ突入。

 これはぶっちぎりか――男を撒きながら、独走状態で自宅へゴール!


 いやあ、良い勝負でした。

 夜食のあとの、極度の緊張&中距離走ながらも懸命に走り切った常陸乃少年。

 賞賛に値しますね。


 自室へ戻って、勝利の余韻に浸る常陸乃少年でしたが――

 そのあとメチャクチャ吐いた。


                                   了

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