4人目 茨〇県警のパトロール  ★☆☆☆☆

 だがらおめぇですから、いばら『き』だって何度も言ってっぺよ言ってるでしょ

 あぁ?え? おめぇ、もどから訛っでっるっつってもよぉいや、元からなまってると言われても……。

 それ言ったらおしめーだっぺよおめぇおしまいでしょ

 おごられっかんな怒られるよんなごとそんなこといっでっと言ってると

 あ?え? 文章じゃイントネーション伝わんね?

 しゃーんめよおめえ仕方ないでしょ、そんなと言ったって!


   ◇


 どうも。茨城弁が下手な、茨城出身者です。

 高校生の時分。冬の夜更け。友人と、都道府県魅力度ランキング万年最下位の町をうろついていると、軽トラに屋台をくっつけた、移動式のラーメン屋を発見し、

「寒いしラーメン食ってこうぜ」

 という話になったんです。


 屋台のおやっさんに夜食を注文して、五分もしないくらいでした。

 市道の遠くに赤いパトランプが見えたかと思うと、なにやらそれがこちらに近づいてくるんです。徐々に、徐々に、明らかになるセダンのフォルム。


 やだなー、こわいなー。


 そう思って見ていると、『パトカー』という特徴がハッキリわかる距離まで近づいてきました。そのうちパトカーは、屋台が停まっているスペースに入ってきて、エンジンを止めたんです。運転席、助手席、両側のドアが開くと、ゆらりと降車してくるふたつの紺色の制服。靴音を鳴らす、まごうことなき地方公務員。


 その時の心情がこちら。

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 


  あぁ、ほどぉされる

  もぅマヂ無理 屋台のラーメンちょぉ大好きだったのに

  どぉせウチゎ深夜の暗闇を泳がされてたってこと

  もぅマヂ無理 リスヶしょ

  リスケはオフィスでょく……させられるゃつ

  困ったらすぐリスケ マヂプロパー社員むかつく

  上司にエスカレしょ


                                ひかる

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 私たちは補導を覚悟し、身を小さくしてラーメンを待っていると、地方公務員はこちらの存在に気づくなり、「なんだ、こんな時間に。今帰りか?」と一言。空いた横の席に腰を下ろし、自分たちの夜食を注文し出したのです。

 ふたりの地方公務員は席に落ち着いてからも、我々に『本題』を振ってはこず、談笑をして息を抜いています。

 ――私たちがキョトンとしていると、「へいお待ち」とともに、透き通ったスープの醤油ラーメンが眼前に置かれ、不安は食欲にかき消されました。


「いただきます」

「お前ら高校生か?」

「あ……はい。家すぐそこなんで(嘘)」

「そうか。早く帰んないとダメだかんな?」

「こ、これ食ったら帰ります……(嘘)」


 そう。この話は、特に山も谷もなく、四人で仲良くラーメンをすすって、数分後には「気をつけて帰れよ」と、解放されるほのぼのエピソードです。


 本来は、補導しなかった警察官の職務態度を問題視するべきなのでしょうか。

 ですが田舎の深夜パトロールで、人畜無害な学生が二名ラーメンを食っているところにカチこみかけ、

『はい、おめえ補導すっから住所と学校教えろ』

 というイキりポリスメンが登場する世界とは、また別の話なのでしょうね。

 それに、時代も時代でしたし緩かったのかもしれません。


 私も夜勤の大変さは経験したことがあるので……ま、多少はね?


 あ、ちなみに冒頭のような訛りをする人種には山奥で出会えます。

 そっちの方は★3ですが。


                                   了

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