第46話 マリアの意図。
最早、お馴染みとなった事情聴取を終えて、俺と奈緒ちゃん、湯川巡査はコンビニに車で向かう。
「彊兵君と奈緒ちゃんは何を買いに行くつもりだったの?」
湯川巡査は車を運転しながら俺達に聞いてくる。
「さっきの事情聴取でも話したけど、特に用事は無いんだけど、気晴らしに行こうって事になってね。だから、特に買う物は決まってなかったんだよ。」
俺の言葉にしばらく無口だった湯川さんは、やがて口を開く。
「取り巻きが出てきたそうよ。あの事件での関連性は低いって事でね。」
…………馬鹿な。 あの状況下で関連性が低い?!
確かに証拠品が消失したのは痛手だったが……。
「でも、恐らく彼等だけではもう何もしてこないわよ。あくまでも、石原の指示で動いていただけなんだから。」
確かに湯川さんの言う通り。石原と田原は、逮捕されている。 あいつらだけでは何もできないのは明白だった。
「お姉ちゃん、取り巻きって前の事件の奴等?」
「奈緒ちゃんには迷惑を掛けてしまった、ごめんなさい……。」
俺達がうかうかしていたせいだ。
「いえ、あれはお姉ちゃんが以前から隣の家の人の事をよく把握していたのに失念していたせいです、先輩のせいじゃありません!」
奈緒ちゃんの言葉が相当刺さったのだろう。 湯川さんの顔は涙でビショビショだった。
「着きましたよ、コンビニ。奈緒ちゃん、私も缶コーヒー買って来て。」
「わかった、行ってきます!」
俺と奈緒ちゃんは車を降り、コンビニに入る。
「彊兵先輩は何買いますか?」
「んー……、取り敢えずは晩飯かな。」
「そっか、事情聴取でもう夜九時になりますもんね。」
俺達は弁当コーナーを隅から隅まで吟味する。
「…………先輩?」
突如、後ろから奈緒ちゃんではない誰かに声を掛けられる。
「………………マリア………何で……。」
「マリアちゃん!こんばんは!」
俺たちの目の前に居たのは、天ヶ瀬マリアだった。
「今更何の用だ?話す事なんか無いだろ?」
俺のつっけんどんな対応にも関わらず、マリアは話し掛けてくる。
「あれからどうしてLIMEくれなかったの?」
はぁ?何を言っているのか全く分からない……。
「奈緒ちゃん、早く買い物して帰ろう。」
俺は一刻も早く家に帰りたかった。 マリアが何を言いたいのか、全く見当もつかない。
「あ、はい……。じ、じゃあ、マリアちゃん、またね。おやすみなさい!」
俺達は会計を済ませると、さっさとコンビニを後にした。
「彊兵君、さっきマリアちゃん入ってったけど、いいの?」
車に戻るなり、湯川さんに突っ込まれるが、正直それどころじゃない。
「関係ありません、出して下さい。帰りましょう。」
俺が鬼気迫る表情や声を出していたのか、湯川さんは
「はいぃぃぃぃ………!!」
せっせかと車を発進させた。
何で、今になって声を掛けてくるんだ!
昼間の出来事は何だったんだよ!
ーーーーーー?
マリアはさっき言っていたな。
『あれからどうしてLIMEくれなかったの?』
どういう事だ? 俺は服やパンツの中を探すがスマホが無い。
そっか、さっき壁に思い切り投げつけて……。
マリアの放った言葉の意味が気になるが、自宅に着くまでの辛抱だ………辛抱。
ソワソワしている俺を尻目に湯川さんが口を開く。
「あ、そういえば、昨日発売のスフレがあったんですよー!買いに行っていいですかぁ?」
「帰るんだよぉーーーーーー!!」
俺の放った叫びは、今夏一番の雄叫びになりそうな勢いだった。
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