第42話 下着選びと俺。

「彊兵先輩、お待たせしました!……って、何やってるんですか……床に突っ伏して。」

奈緒ちゃんが声を掛けてくる。俺には説明する気力がないからナレーションに説明させよう………。


ーーー改めて説明しよう!

湯川姉妹の妹『湯川奈緒』はマリアと同級生で同じクラスの一年生だ。

刈谷やマリアと仲がとてもいい。

茶髪のポニーテールで、大きなリボンが良く似合う童顔の美少女だ。

背は140センチ程と小柄で、色白、華奢な女の子。

今日は黒色のキャミソールの上に、藍色のボーダーラインの入った白のオフショル、デニムのショートパンツ。鮮やかな青緑色のスニーカーを履いていた。


「いや、目の前の光景にとてつもなくダメージを受けてたところなんだ……。」

「目の前って、私の……?」

何か違う気もするが、今はとてもツッコミできる状況ではない。

あのさっき一緒にいた男は誰!

そして、俺を紹介する時、何故彼氏だと言わなかったの!?


「彊兵君、気分悪いなら休もうか?」

湯川姉妹が心配している……!折角のショッピングに水を差してはいけない!

「大丈夫です、意外に早かったですね!じゃあ、次に行きましょう!」

「彊兵先輩、次は………その………!」

「行くよー!なんて店だっけ!こっち?」

俺は奈緒の手を引いて歩き出す。

「彊兵先輩ーーー!?」

奈緒が何か言ってるが、もうヤケだ!二人のショッピングにとことん付き合って、今日のあの目撃事件を忘れてやる!


ーーーーーー。


下着……ショップ………。

わー!色鮮やかだー!スケスケやー!!

って、中に入れるかーー!

俺は奈緒と繋いでいた手を離す。

が、直ぐに奈緒によって、手を繋ぎ直される。

「行きますよ、彊兵先輩!! 先輩から積極的に行ったんですから!」

ズンズン進んでいく奈緒。

「手を繋いでいれば、周りはカップルが見に来てるって思うだけですよ!」

「た、確かにそうなんだけど………。」

「何ですか?私が彼女じゃ不満なんですか?!」

そうじゃなくてーーーーーー!!


「湯川姉妹で見てくればよいのでは?」

俺は極論を言った。…………つもりだった。

「男性の視点からの意見も重要なんです!」

最早、手を繋ぐではなく、ギュッと腕にしがみついてくる。

「お、俺にはマリアがいるんだ!」

「知ってますよ。でも、友達同士で買い物に来てるだけなので、大丈夫です!」


ーーーーーー。


「奈緒、これなんかどうかな。」

「おぉー、彊兵先輩はこういうのが好みなんですね、じゃあこれにします!」

慣れとは怖いものだな。すっかり平気になってしまった……。

「彊兵先輩、これなんかはどうですか!」

奈緒の持ってきた下着か。お前の女子力を見てやろうじゃないか!

ーーー紐?

ーーー布地はドコ?あぁ、ここにちょっとか〜。


「駄目だろう、こんなん!丸見えじゃないか!」

「別にその上からパンツ履いたりするから大丈夫ですよ。それに………。」

奈緒は俺の耳元に手を当てて囁く。

「好きな人にしか見せないから安心して下さい。」

「………………うん。」

一体何なんだ?ドキドキしてしまった。

俺が言われてるわけじゃないし、俺にはマリアが………………あの男は誰…………。


その頃の湯川姉。


「合うサイズが中々無い…………。合ってもデザインがちょっとなぁ…………。」

湯川姉は胸が大きい為、探すのが大変なのだ。

「それに、何であんなに奈緒は積極的になれるのに、私は消極的なんだろうか………。」

一人寂しく下着選びをする姉だった。



ーーーお会計も終わり、下着選びから解放される俺。


「次は彊兵先輩の服選びですよ!」

奈緒は俺の手を引いて、下着ショップから外に出る。


そこには仲良く手を繋ぐ、マリアとさっきの知らない男の姿があった。

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