第32話 田崎、死す!?

俺達は今まで集めた情報を、東栄を通じて警察に開示した。

直接警察に行かなかったことにも理由はある。

まず、俺達がそのまま警察に持ち込んで行ったところで、真面目に対応して、捜査してくれる可能性は限りなく低い。

そこで、警視総監を父に持ち、警視長を母に持つ、トンデモ家族の東栄にお願いした方のが、真面目に対応してくれると考えた訳だ。


「大田、万が一奴らが来た場合、何かあるといけない。隠れながらお母様の警護に当たれ。」

「分かりました。」 

大田警部補は部屋を出て階段を降りてゆく。

しばらくして、一階から声がする。

「いっやん、こんなイケメン!発情期迎えたらどうすんのよぉ!もぅ!」

母親ーーーーーーーーーーーーーーー!!


「お母様、あまりこういうの気にしない方なんですね……。」

マリアは複雑な表情を浮かべ、こちらを見てくる。

「昔からあんな感じだよ。」

マリアが引いてるじゃねぇか!あのBBA!


「田崎さん、お部屋を拝見させてもらいたいのですが……。」

古橋警部がバツが悪そうにそう言葉にした瞬間だった。

「シッ!!皆、静かに!!」

俺は一階の僅かな会話に気が付いた。

『多分、この声は取り巻き達だ。』

『取り巻き達は昔からこの家に出入りしていたのですか?』

湯川巡査の言葉に俺は首を振る。

『最近ですよ。部屋に来たことなんかは一度もないです。』

『現金を仕舞っていた場所を後で教えてもらえますか?誰も他には触れたことない場所ですよね。』

湯川巡査の言葉通り、誰も触れない場所に隠していた。

『そうですね、普通では触れない場所ですね。』

『では、鑑識を呼び、指紋の検出をさせてもらいます。』

湯川巡査、しっかりと10万円の件、憶えていたのか。


『静かに………上がってくる。』

トントンと数名の足音が階段を上がってくる。


「この部屋です、田原さん。」

田原!?何で奴がここに………!?

「奴が出掛けてるうちにやるぞ。」

間違いなく田原の声だ!


『田原とは昨日、遊園地で出会った田原で間違いないですか?』

古橋警部の言葉に頷く。

しばらくの後、ガチャガチャと音が聞こえてくる。


「これでいい。石原の所に行くぞ。」

そう言い残し、田原達は階段を降りてゆく。

『水島、大田を連れて奴等を追え!石原の自宅と別宅を押さえろ。』

『はい。行ってきます!』

床に耳を当て、奴等が出ていったことを確認すると、静かに水島さんは部屋を出ていった。

古橋警部はカーテンをゆっくりちょっとだけ捲り、田原達の去っていった方向と人数を確認する。


『彊兵さんの部屋以外を確認してきます。』

湯川巡査はそう言うと部屋を去る。

あれ、俺は湯川さんに名前教えたっけ?


ーーーしばらくして。


「お母様以外は誰も居ませんでしたね。」

湯川巡査が戻ってくる。

「俺の部屋には何が仕掛けられたんだ?」

「恐らく、今までのパターンだと、監視カメラか盗聴器よね。」

刈谷の言うように、今までのパターンならそうだが、田原も一緒だった。

「ちょっとだけ見てくる。部屋の配置変わってたら直ぐに分かるし。」

「でしたら、私も行きます!」

「湯川さんは警察の方でしょ?カメラに映ったりしたら、石原は証拠隠滅を図りますよ、多分。」


ーーー結果、俺が部屋を見に行くことになった。

ゴープロ付けて……………。


「んじゃ、今から部屋入りますねー。」

ガチャ……。


見た感じ、変わっている所は無さそうだが……。

ん?置き手紙、と箱?いやにデカイな。


「今まで、すまなかった。せめてもの気持ちだ。受け取ってくれ。」

ふむ。謝罪の品か。


俺は箱に手を伸ばす。

「田崎さん、駄目だーーー!」

古橋警部の声が空き部屋の方から聞こえてきたが、既に遅かった。

俺は、箱を開けてしまっていた。目に飛び込んできたのは、複数のコードが折り重なった、よくドラマで見る時限爆弾のような物だった。

コードは蓋と繋がっていた。

「やっちまった…………………。」


ドガアァァァァァァァン!!!

目の前が白く光った時には俺の意識は飛んでいた。

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