第31話 反撃の狼煙《のろし》
ーーーーーー翌日。
元々立てていた予定は狂ってしまったが、それでも有益な情報を得ることができたし、カメラが取られてしまっているかもという心配も取り越し苦労だったようだ。
ピーンポーン………。
玄関のチャイムが鳴る。
「はーい!」
母親が出ようとするが、俺がそれを制する。
「いいよ、俺が出る。」
ガチャ……。
玄関を開けるとそこには……。
天ヶ瀬と刈谷、東栄。そして黒いスーツを着た男性が二人、女性が二人立っていた。
「足伊達警察署の、古橋と大田、湯川と水島です。」
署員を名乗った五十代くらいの白髪交じりのおじさんが古橋警部さん。
二十代くらいのメガネをかけたイケメン君が大田警部補さん。
髪の毛を後ろに一つで束ねた二十代くらいの美人女性が湯川巡査さん。
ちょいぽっちゃりの優しそうな四十代くらいのおば様が水島巡査部長さん。
「どうなってるんですか、先輩!?この方達、警察の方ですよね!」
「そうだ。東栄に呼んでもらった。」
「まぁ、正確には僕の父親ですけどね!」
そう、東栄の家族は警察の人間。
東栄の父親は警視総監、母親は警視長という、まさにキャリア組の息子なのだ。
「何で、英二が警察官になりたがらないのかは分からないが……。」
「僕はアニメ映画の監督になるのが夢なんだ!こんな明らかな縦社会、アニメとは程遠い体育会系社会、反吐が出る!」
現場の警察官を目の前に、よく言うな……英二は。
「英二坊ちゃん………(涙)」
わかります、古橋さん……。
「取り敢えず、中へ入ってください。母さん、今から誰が来ても俺達は居ない事にして。それでも、部屋に上がりたい奴は入れていいからさ。」
「なんか分からないけど、オッケー!」
俺はみんなの靴を下駄箱に入れると、皆を連れて二階の空き部屋へと向かう。
「先輩、ここは?」
「空き部屋だ。昨日、自宅に帰ってきたら部屋が荒らされていてな。現金10万円が無くなっていた。 母親に聞いたら、例の取り巻き達が俺の部屋に来たらしい。」
「10万円!大金じゃないですか!届けは勿論出されましたよね!?」
古橋さんの言葉に首を振る。
「いえ。10万円は確かに大金ですが、僕が皆さんをお呼びしたのはそれが理由ではありません。」
「と、言われますと………?」
古橋さんが腕を組み、首を傾げる。
「先ずはこの映像を見てもらえますか?」
天ヶ瀬が犯されかけた時の映像を見せる。
「これは……。以前聞いたことのある音声と同じ……映像……。前に伺ったときは映像を収録したSDメモリーカードはなく、演劇だったと聞いておりますが……。」
古橋さんの言葉に刈谷が立ち上がる。
「ごめんなさい!あの件は、私が石原先生に脅されてでっち上げた作り話なんです……。」
涙ながらに訴えかける刈谷。
「………………なっ!?」
驚愕する警察官一同。
「これは大変だよねー。まさか警察官が犯人側の言う事を信じてしまい、細かい捜査もせずに、主犯格を野放しにしてしまうとは………ねぇ?」
嫌味満々で警察官一同に言い放つ東栄。
「……申し訳ありません……。」
「謝るのは僕じゃないと思うけど。」
流石にいつもは
「天ヶ瀬さん………大変申し訳ありませんでした。これは私達の完全な捜査ミスです。再度、捜査をし直します。」
警察官一同、天ヶ瀬に頭を深々と下げる。
「あ、いえ、私はもう……。」
「田崎、何かまだ情報があるから招集したんだろ?出しなよ。」
「その通りだ。これだけではない。ここに、ある!」
そう言い、俺は全ての証拠品の入ったバッグを取り出す。
「後は、天ヶ瀬、録音した音声を。」
「わかりました。」
天ヶ瀬はスマホを取り出す。
ここに証拠品が揃った。
「ここには、さっきの映像を四方向から撮影したSDカードが残り三枚。そして音声。後は俺の部屋を盗撮した監視カメラと、モニター、SDカード。刈谷の自白した音声。」
俺はバッグから一つ一つの証拠品を取り出していく。
そして、刈谷が改めて石原に肉体関係を求められ襲われかけた事。
そして、拒否すると片想いをしていた俺を、退学処分にする等と脅された事。
石原のコレクション収集と、俺の退学目的で、俺の自宅に隠しカメラを仕掛けた事。
石原の別宅にポルノDVDや不純異性交遊等を収めたDVDが保管されている事等、全てを話した。
「まさか………その様な事があったとは……。」
事情を改めて聞いた警察官達は只々、愕然としていた。
「直ぐに捜査にあたります。これ程迄に酷いとは……。」
最早、逃げ道はないぞ、石原。
今まで好き勝手女性を
今ここに俺達の反撃が始まる。
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