第20話 天ケ瀬の怒り。
三人は刈谷の家の前で待ち構えている取り巻き達と対峙していた。
「ここは刈谷さんのご自宅のはず。貴方達には用がない場所では?」
天ヶ瀬が仁王立ちで取り巻きを睨みつけながら問いかける。
「天ヶ瀬か。厄介な奴を味方に付けたな、裏切り者!SDカード出せよ!」
裏切り者と呼ばれていたのは、他ならない刈谷だった。
SDメモリーカードを出せと迫る取り巻き5人組。
「石原の命令ですか?」
「あぁ!?テメェには関係ねぇんだよ、天ヶ瀬ェ!!」
取り巻きの一人がハイキックを繰り出してくる。
「これで正当防衛ですね。」
右ハイキックを左腕で受けると、両手で右足を抱え込むように掴み、自分の体を横に回転させた。
「……………!?」
取り巻きの左足は大きく宙に浮き、身体は右側に傾く。
天ヶ瀬は一回転したあと、地面に踏ん張り、取り巻きの体を地面に叩きつけた。
「……………がっ!!」
思い切り地面に叩きつけられ、そのまま動かなくなる。
…………死んでないよね?
ドラゴンスクリューだろうか………。
(わからない人は調べてみてね!)
「…………次は?」
「……クソが!くたばれや!」
取り巻きBが金属バットを手に天ケ瀬に向かっていく。
「刈谷さんをそのバットで殴るつもりだったんですか?」
「しつけだよ、しつけ!主人に歯向かったらどうなるかってな!」
取り巻きBが金属バットを両手で振り上げたその瞬間。
バキッ…………!
鈍い、何かが折れた音とともに
ガラン!…………ガランッ!
と金属音が鳴り響く。
「………がっ、ぐぅ……………!!」
取り巻きBが右肘を押さえてうずくまっていた。
恐らくは右肘の関節を的確に狙った本気のハイキックなんだろう。
にしても、やる事が悪魔すぎる……。
「しつけなんでしょ?なら、私が変わりに貴方をしつけてやりましょうか?」
うずくまる取り巻きBの頭を地面に叩きつけるように足で踏みつける天ケ瀬。
「……ごめ………さい。」
「聞こえないよ!?」
更に足で後頭部を踏みつける天ケ瀬。
「ごめんなさい、ごめんなさい!!」
「大人しくあの世にいけよ、ムシケラ。」
天ケ瀬はそう言い放つと右脇腹に思い切りローキックを放った。
「ーーーーーーーーーーーー!!??」
もはや声にもならず、バタバタとのたうち回る取り巻きB。
天ケ瀬の様子がさっきからおかしい。
あそこまで徹底的にやる奴じゃ…………やってたか。
でも、明らかに口調と気迫が違っていた。
「金属バットで殴られるよりマシでしょ。感謝してもらいたいくらいだわ。」
天ケ瀬は残りの取り巻きを睨みつける。
「き、今日は見逃してやるよ!」
そう言って走り去る取り巻きに
「じゃあ、明日以降見かけたら、コチラから潰しに行ってやるから覚悟しときな!」
と天ケ瀬が叫ぶ。
その数分後、警察が来たのは言うまでもない。
流石は天ケ瀬。
警察が来る前に残された取り巻き二人に『余計な事話したら関節をバラバラにするからね。』と脅していた。もはやどちらが悪人か分からない。
取り巻き二人は完全にビビッて頷く事しか出来なくなっていた。
取り巻き二人は簡単に事情だけ聞き、そのまま病院送りになっていたから、本格的な事情聴取は後日になるだろうが。
残された俺達の事情聴取では、全員『ただの痴話喧嘩が発展してこうなった』の一点張りだった。
ただ、天ケ瀬はいくら相手がバットを持っていたからとはいえ、やり過ぎだと言われ、過剰防衛として警察から厳重注意を受けていた。
事情聴取が終わり、警察から開放された頃には日は変わっていた。
「こりゃ、親から大目玉だな。」
「すみません、先輩!私がやり過ぎたせいで!」
「キョウ君、ごめんなさい!巻き込んでしまって……。」
「気にすんなよ、俺達にできる事をやろうぜ。絶対に石原を許しちゃいけない。」
俺はまだ、この時知らなかったのだ。
何も始まってもいなかった事を。
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