第8話 田崎、豹変!

ーーー時は遡り下校時。



謹慎処分となった俺は、家に帰る支度をしていた。

その時だった。田原が息を切らしながら教室へと飛び込んできた。


「大変だ!天ヶ瀬が石原達に捕まったみたいだ!助けに行くぞ!」


天ヶ瀬、アイツやっぱり石原に直訴しに行ってたのか!


「くそ!田原案内してくれ!」

「おぅ!」

田原の先導に付いていく。仕方がない……。やりたくは無かったが……。


「キョウ君!?」

廊下で刈谷とすれ違う。


「キョウ君!?何でそんな奴と!?」

俺は刈谷の言葉も気に留めず、田原に付いてただひたすらに走った。


「ここだ。」

田原に案内された場所は旧体育倉庫だった。


今の新しい体育倉庫は運動場のすぐ脇にあるが、この体育倉庫は、体育館裏のすぐ脇にある。


利便性が悪いのと、老朽化もあり、放置状態で知らない人も多い。


「この中に閉じ込められているが、鍵が閉まって開けれない。下に取り付けられてる窓は割られないように金属が入ってる。」


確かに見てみると、飛散防止フィルムが貼られ、鎖のような黒い金属が窓ガラス全体に細かく張り巡らされていた。


「上の小窓からなら入れそうだが……。」

通気用に作られたのだろうか。

人一人が入れそうな小窓が見えた。


中から天ヶ瀬の声が聴こえる。


「ここにいたか、天ヶ瀬!」


おあつらえ向きに、高跳びの棒(ポール)まである。


罠かもしれないが、迷っている暇なんか無かった。


「今行く。」


中にいるであろう天ヶ瀬に声をかけた。 


即興で、地面に穴を掘り、狙いを定める。

あの小窓までならギリ届きそうだ。


「お、おい、それで入る気かよ!」

田原が止めに入るが


「棒高跳び経験者だからね。」

俺はそう言い、ポールを携え、勢いよく走る。


即興で作った穴にポールの先端を引っ掛け、ポールを、思い切りしならせた。


「行ける!」

俺の身体は弧を描き、小窓に突っ込んでいった!


ガシャァァァン!!!


小窓を突き破るが、ここは二階ほどの高さの上に、体中、ガラスが突き刺さった。


「やべっ」

俺は咄嗟に受け身を取ったが、ゴロゴロと転がり、やがて止まった。


「ってぇー……………。」

体中血まみれだ………。あ、田原を入れないと………。


正直、今ので結構キテる……。

俺は天ヶ瀬の無事を確認すると、直ぐに扉の鍵を開けた。


「女の為とはいえ、無茶し過ぎだ、阿呆。」

田原に小突かれる。体中ボロボロで痛いんだけど……。

仕方ない………やるか。


「さて、説明してもらえますか?クズ共。」

俺の言葉に田原が

「おい、田崎?大丈夫か?!変だぞ、お前。」

異変に気が付いたようだ。

というよりも、元々はこんな口調だったんだけど。


「おい、クソガキ共!撮影の邪魔しやがって!お前ら、こいつらを片付けてからヤれ!」

石原の声に田原の取り巻き達が動く。


「テメェ等、こんな事にまで手ぇ出しやがって!」

田原の言葉に

「今更善人ヅラかよ。女に負けた見掛け倒し君!」

取り巻きが田原に向かってゲラゲラと笑う。


「田崎と一緒にくたばり……な?!」

俺は一瞬の隙きを突き、飛び膝蹴りをかました。

取り巻きの一人が吹っ飛び、体育用具に突っ込む。


ガチャガタガタ……!!

崩れ落ちる体育用具。


「本当は手荒な事はしたくなかったが、どちらにせよ、謹慎も食らってるし、こんなクズ相手なら何も無いでしょ。」

こっからが反撃開始だ!


「……!先輩方、後ろ!」

俺と田原が振り向いた時には遅かった。


バチバチバチ……!!


俺と田原は凄まじい衝撃に倒れた。

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