自堕落少女の昼下がり
カーテンの隙間から日が差し込んでいる。手元の置き時計を掴んで見れば、時刻は昼の1時。布団の中でゴロゴロと転がってから、ゆっくりと身体を起こす。寝すぎたせいか、少し頭が痛い。
視線を巡らせると、自分でもわかるほど悲惨な光景が広がっていた。飲みかけの大きなペットボトルがいくつも転がり、小さい折りたたみ机の上には昨日の夕食のゴミが放置されている。床の上には漫画や小説が散らばり、現代アートさながらだった。
まぁ、そんなことはどうでもいいのだ。床の現代アートに手を伸ばし、適当な本を手に取る。
「『ミジンコでもわかる微分積分』……」
間違えた。これは幼馴染が持ってきた参考書だ。どうでもいいけど、このタイトル喧嘩売ってないか?
参考書を本の山に投げ、手近な小説を手に取る。世界が小説だと知ってしまった少年が、なんの力も持たない少女とともに最強を目指す物語だ。個人的には結構好き。布団の上に胡座をかき、何度も読んだページをめくる。いくつかのお気に入りシーンを読み返して満足したので、それも投げて戻し、カレンダーに視線を向けた。
あと一週間後に、幼馴染がくる。そういう約束だ。非常に、非常に面倒だが、この部屋を片付けなければならない。
「……面倒くさい」
でも、やっぱりやる気なんて出なかった。布団に寝転がり、照明の輪っかを見つめる。面倒だから、幼馴染がやってくれないだろうか。でも、ここまで酷いと、掃除好きの彼でも敬遠してしまうかもしれない。それは避けたい。
それと、彼がくるということは、また受験の話が飛び出してくるだろう。正直、受験勉強なんてもう二度としたくない。彼と同じ大学に通って家事を任せて楽がしたかったから、珍しく勉強に打ち込んだのに。なんで落ちたんだ。知能レベルの違いか。
ひとしきり嘆いたところで、不意に外階段を登る足音が聞こえた。どこかで聞き覚えのある音に、冷や汗が伝う。まずい。まずいまずいまずいまずい。なんで。予定より一週間も早い。
大方、気が向いたからとかそういう理由だろうけど、今回ばかりはまったくありがたくなかった。なにせこの惨状だ。彼が忙しいからって片付けをしてこなかったのが仇になった。
着替えようと、もう一度周囲を見回す。視界に映ったのは洗濯物の山。下着から何から、すべて洗濯しないで放置していたことを思い出した。たぶん、着替えはない。
……もう、全てを諦めよう。総決意したと同時に、チャイムが鳴った。
「面倒くさい……」
最後に口癖を言ってから、お説教必至の出迎えのため、腰を浮かせた。
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