第10話
緑川に看板を建て終えると丸山さんは「これで君も共犯者だね」と笑った。私も笑った。「もう引き返せないよ。看板を勝手に建てるのは犯罪だから。犯罪に手を貸したんだよ」と丸山さんは言った。そのとき、引っ込んでいた不安感が堰を切ったようにこみ上げてきた。私は真顔になってしまったけど、丸山さんは笑って「じゃあ帰りますか」と言った。
けずりこ屋につくと丸山さんは「じゃあお疲れ」と言った。なんか、いろいろ聞き込みをするつもりだったけど、なんとなく帰る空気になってしまったので私は「お疲れ様です」と言って帰った。
あとでネットで調べて、看板を建てるのは、屋外広告条例とか道路交通法とかに違反していそうではあるけど、そんなに重い罪にはならなそうだと思い、安心した。
緑川の橋の下には『私は猫を殺したことがある。』と書かれた看板が建った。
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