彼女との今後は。

 ……そんなわけで、今に至る。

 未だに笹場からの告白の返事はしていない。彼女も「好き」とは幾度も言えど、催促はしてこなかった。

 僕は彼女に「はい」と受け入れるほど好きではない。その秀才さには素直に尊敬の念を抱くこともあるし、生徒会の仕事もとてもよく補助してくれていてありがたいが。だからといって「いいえ」と否定すれば良くないことが起きると直感が言っている。

 だから僕は今日も笹場に怯えながら、彼女と生徒会を共にする。




「紗枝李様、本当に……月代さんが好きなんですか?」


 その場を去った笹場に、ふと女子生徒が話しかけてくる。


「えぇ。問題でも?」


 仮面のような笑みに女子生徒は一生懸命首を横に振った。


「いえいえ! その、どうしてそんなに好きなんだろうとか、好きなら振り向いてくれないのすごく辛いのに、どうして平然としていられるんだろうとか思って……」


 恋の悩みを持っているのか、女子生徒は照れくさそうに、しかし憂鬱げに言った。


「簡単です。私はプライドが高いくせに打たれ弱い、俗に言う、なんやったっけ、ヘタレな男性が好きなのと……振り向いてくれるまでがえらい楽しいからです。まぁ、これまでの男性は、私を好いてからは随分丸くなっちゃってつまらんかったんですけども……。成美さんにはそういったところも期待してるんです」


 美しく不敵な笑みに女子生徒は背筋が凍るのを感じた。


「だから、そんなにアプローチしてるんですね」

「はい。せやから今は成美さんが好きになってくれるよう、どんどん押してるんです。恋は押して押して押し倒すものやと聞いたから、ね」


 笹場紗枝李の想いが届くことがあるのかは分からないが、彼女の微笑みが今後も月代成美を震え上がらせることになるのは間違いないだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕の恐怖の対象は僕が恋愛対象 こげみかん @jdrdhwyjamjg

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ