96.結婚します?

 ある日の放課後。

 ホームルームが終わってからも教室は賑わっていた。

 別に用事があって残っているわけじゃない。

 なんてことのない談笑をしているだけだ。


「へぇ~ ミズキの両親って駆け落ちだったんだな」


「はい。父は人間の貴族で、他種族との結婚には反対されてましたから」


「それを振り切って結婚するために、貴族の地位を捨ててオレたちの里に乗り込んできたんだぜ。男の中の男って感じてかっけぇよなぁ」


 なぜか女子トークに混ざるイズキ。

 そこから自分たちの両親の話とか、周りであった色恋沙汰の話に発展した。

 その流れでレノアが俺たちにこんな質問をしてきたのだ。


「ねぇクロ先生」


「ん?」


「先生たちっていつ結婚するの?」


 生徒たちの視線が俺たちに集まった。

 予想していなかった質問だったので少し動揺した。


 結婚、結婚かぁ……。

 そういえば、あんまり時期とかは考えてなかったな。

 この学校にきてすぐの頃は、生徒たちに俺たちの関係を黙ってたし、結婚なんてできない状況だったんだよな。

 だけど今は違うわけで……う~ん……。


「ユノア」


「はい」


「結婚するか?」


「うん。いいよ」


「えっ……」


 一瞬教室が静まり返った。


「「「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」」」


 その後、生徒たちは外まで響くほど大きな声で驚いた。


「何だよお前ら。騒ぎすぎだろ」


「えっちょっ、でも、そんなに簡単に!?」


 レノアは慌てすぎてまともに言葉が出なかった。

 彼女がさっきの質問をしたのは、驚き慌てる俺たちの反応が見たかったからだという。

 それなのにあっさりと、まるで夕飯のメニューを決めるみたいにプロポーズしたので、逆に彼女のほうが面をくらってしまった。


「プロポーズって、もっとこう、場所とかセリフとか考えるんじゃないの!?」


「あーまぁ、世間的にはそうなんだろうな」


「だったらさぁー」


「良いんだよ。俺たちはこれでいい」


「うん。ボクたちはこれでいい」


 俺もユノアも同じ意見だった。

 前に生徒たちに触発されてデートをしたことがあった。

 そのときにわかったんだ。

 恋人らしいデートとか、そういう普通ってことが俺たちには合ってない。

 変に気取るより、いつも通りに接するのが一番だってこと。

 大切なのは、お互いに想いが通じ合っていることで、それさえあれば良いんだってこと。


「最近忙しくて考える余裕もなかったけど、結婚したいって気持ちはずっとあったんだ」


「そうだね。ちょっとタイミングが合わなかったってだけかな」


「そうそう。それじゃ式はいつにする?」


「う~ん、ボクはいつでもいいよ」


「だったらなるべく早めにするか。あーでもあれって準備とか大変なんだっけ」


「そうみたいだね。これからしばらく忙しくなるかも」


 俺たちは淡々と話を進めていった。

 その様子を唖然と見ていた生徒たちは、呆れてしまって笑い出した。


「やっぱりすごいね。クロ先生たちって」


「だな。オレたちの想像なんて簡単に超えてきやがる」


「じゃあ先生! 子供はいつ頃つくるの?」


 レノアは更なる質問を口にした。


「今のところ予定はない」


「うん。少なくとも、みんなが卒業するまではね」


「わたしたち?」


「おう。子供については、前に話し合ったことがあってさ。今思えば、結婚もしてないのに何でってなるんだけど。子供をつくるのは、お前たちをちゃんと卒業させてからにしようって決めてたんだ」


 子供ができれば子育てに時間を使わなくてはならない。

 そうなったら、どちらかは先生と辞めるか休まないといけなくなる。


「だからまぁ、それまではお前たちの成長を楽しみにするよ」


「みんなが笑顔で卒業できるまで、ちゃんと先生として頑張るからね」

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