92.戦争準備

 廃街での戦いを終えた俺たちは、王国に戻ってすぐ報告へ向かった。

 陛下の部屋へ向かう途中、場内が妙に慌しいと感じた。

 違和感を感じつつも陛下の待つ部屋に向かい、新たに得た情報を伝えた。


「今の話は事実なのか!?」


「ええ、残念ながら事実ですよ」


 陛下はひどく驚いていた。

 俺たちが嘘を言うはずがないとわかっているのに、反射的に聞き返してしまうほどだ。

 誰だって聞き返したくもなるだろう。

 それくらいの事件が起こったわけだ。


「しかし……いや、そうか。そういうことだったのか」


「陛下?」


「私からも二人に連絡がある」


 陛下は改まってそう言った。

 表情の硬さから良い知らせではないと察しがつく。

 さらにこのタイミングでの情報だ。


「ルグドニア王国が戦争の準備をしている」


 やはり良くない知らせだった。


「間違いないんですか?」


「うむ。確かなすじからの情報だ。ここ数週間ほど前から武器に必要な材料を集めたり、兵士や魔術師を集めているらしい」


 ここで俺はあることを思い出した。

 リベレーターとルグドニア王国は裏で繋がりがある。

 おそらくリベレーターのほうも戦争の準備をしているのではないだろうか。

 俺たちをおびき寄せたのも、戦争に勝つために少しでも不安因子を排除したかったからじゃないのだろうか。

 結果的にその目論見は失敗に終わったけれど、どうやら敵は着々と迫ってきていたらしい。


「私は、わが国が標的となる可能性が極めて高いと考えている」


「俺もそう思いますよ。付け加えるなら、同時にリベレーターも襲撃してくるでしょうね。挟み撃ちってやつですよ」


「もしクロトの言う通りになったら、ボクたちがいても厳しいかもしれない」


 ユノアの意見は正しいと思う。

 ルグドニア王国の兵力に、リベレーターの構成員、さらにはシェフィールの魔神。

 それらすべてを一度に相手にするなんて、さすがの俺たちでも手に余る。


「ただ少なくとも、すぐに攻め込んでくることはないですよ」


「なぜだね?」


「シェフィールが俺の強さを誤認していたからです。数体の魔神で倒せると思っていたようですが、それじゃ足りないと知った。だから今度は、更なる量産化を始めるでしょうね」


「そ、そんなことをされては!」


「ええ、さらに不利な状況になりますね。だけど、いくら彼でもすぐに何百体もの魔神は量産できません」


 魔神の作成方法を確立していても、肝心の人材が集まらなくては生み出せない。

 自分でなってみたからよくわかるけど、魔神化は相当な負荷がかかる。

 並みの魔術師じゃ間違いなく負荷に耐え切れず自壊する。


「つまりその前に……」


「はい。シェフィールを倒せば、戦争も止められます」


 魔神さえいなければ、俺とユノアでどうとでも対処できる。

 肝心なのは魔神を作れる彼だ。

 彼さえ抑えてしまえば問題にならない。


「陛下。できるだけ彼らの情報を集めてください。見つけさえすれば、今度こそ必ず倒してみせます」


「……いいのか?」


「今さらですよ。前にも言いましたよね? ここは俺たちの国でもあるんです」


「生徒たちもいますからね」


「……ありがとう。ではよろしく頼む」


 未来のために戦争を止めろ!


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