81.暗躍する影

 学校中で定期試験に向けて準備が進む中、俺とユノアは王城を訪れていた。

 時間帯は深夜二時、王城もほとんどの部屋の明かりが落ちている頃だ。

 どうしてこんな時間かと聞かれても、それは陛下に言ってくれと答えるしかない。

 俺たちを呼び出したのは陛下だ。

 そして、こういう時間に呼び出されるときは、大抵良い話ではない。


「失礼します」


「待っていたよ。二人とも」


「こんばんわ。リガルド陛下」


 一言ずつあいさつを済ませ、用意されたソファーに腰掛ける。

 室内には俺たち以外に人はおらず、明かり一部を照らす小さな照明だけが灯っている状況だ。

 これだけ見ればわかる通り、お忍びでの話のようだ。


「何かあったんですね」


「うむ。実はリベレーターの拠点の一つが見つかったのだ」


 リベレーター、人間主義を掲げる者たちによって結成された武装組織。

 以前会合から帰る陛下を狙い、同時に学校を占拠した連中のことだ。


「見つかったというより、可能性が高いというべきだろうか。彼らはとても大きな組織で、拠点もいくつかあると予想されている」


「そのうちの一つが、国内にあるかもしれないと?」


「そういうことだ」


 リベレーターにとって、他種族共存を理想とするこの国は、さぞ目障りだろう。

 本当なら今すぐにでも滅ぼしたいと考えているかもしれない。

 もし俺が彼らなら、いずれ攻め込むことを考慮して、国土内に拠点を設けていると思う。


「たぶん一つじゃないですよね。国内にあるのも」


「私もそう考えている。だが、まだ有力な情報は掴んでいない。そこで、新たな情報入手と拠点占領を目的に遠征部隊を編成することになった」


 陛下はそこまで話すと、途中で言葉を詰まらせた。

 俺もユノアも、陛下が何のために俺たちを呼んだのか、この時点でなんとなく察した。

 だからどうして言い辛そうにしているのかもわかる。


「これから言うのは命令ではなくお願いだ。断ってくれても構わない……。二人に、その遠征部隊に同行してほしいのだ」


「いいですよ」


「君たちを政治や軍事には巻き込まない。そう約束した身としては、本当に心苦しい――いいのか?」


「ええ、もちろん。ユノアは?」


「ボクも良いよ。クロトが行くなら一緒に行くよ」


 あまりに簡単に返事をした所為か、陛下はあっけにとられていた。


「ほ、本当にいいのか?」


「はい。前にも言いましたけど、俺たちはもうこの国の一員なんです。この国を脅かすもの、すなわち俺たちの日常を損なうものは、俺たちにとっても敵です。協力してほしいと頼まれれば、断る理由なんてありませんよ」


「彼らはボクたちの生徒に危害を加えようとしましたからね。放っておけませんよ」


「それにほら、リベレーターと王国が関係しているかもしれないなら、俺たちも無関係じゃないでしょ。だから協力させてください」


「……そうか。ありがとう」


 陛下は深く頭を下げた。

 出発の日時は三日後、定期試験前の休日である。

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