79.定期試験

 あれから月日は流れた。

 リアスト海岸での研修から、かれこれ約二ヶ月が経過した今日も、俺はAクラスの教卓に立ち授業をしている。


 キーンコーンカーンコーン――


「はい。今日の授業はここまで。みんなお疲れ様」


 チャイムが鳴ってあいさつをして授業を閉めた。


「クロ先生ー」


 すると生徒たちが教卓に集まってきて、授業内容についての質問やら、いろんな相談事を尋ねてきた。

 この光景はお馴染みになっていて、授業後は必ずと言って良いほどすぐには退室できない。

 もちろん良いことだ。


「あとはホームルーム後に聞くから、一旦戻るぞ」


「はーい!」


 今日までの二ヶ月間は、特に変わったことはしていない。

 普通に授業をして、魔術学校のスケジュール通りに進めている。

 しいて変化をあげるなら、放課後に残る生徒が増えたことか。

 最初は数人が残って実技の練習をしていて、それに俺が付き合うようになってからは、ほぼ全員が毎日残るようになった。


 そういえば、変化と言われればもう一つ思い浮かんだよ。

 研修を終えた辺りからだっただろうか。

 自分はどんな魔術師になりたいのか、何を重点的に学んでいきたいのか。

 そんな感じの目標が、あるいは思想が明確になってきたんだ。

 どれだけ優れた魔術師でも、すべてを極めることは難しい。

 特別な眼を持つ俺でも、精霊魔術のように扱えない分野があるように、必ずできないことは存在する。

 だからこそ、これだけは誰にも負けない!という分野を持っていることは、魔術師にとって大きなアドバンテージになりえる。


 まぁ何が言いたいのかというと、生徒たちは順調に成長しているといこうとだ。

 さて、そろそろホームルームの時間だな。


「みんな来週から定期試験があるのは知ってるな?」


 教卓に両手を置いて質問した俺に、生徒たちは頷いて答えた。

 ここアルステイン魔術学校では、年に三回定期試験を設けている。

 主に筆記試験で、これまでに授業でやった内容から出題される。


「一応言っておくけど、あんまり成績が悪いとAクラスから除名される可能性があるらしいからな。まぁ、お前たちなら大丈夫だと思うけど」


「もちろんですよ!」


 レノアが自身いっぱいに答えた。

 ここAクラスは入学試験の上位成績者で構成されている。

 つまり優等生しか在籍していないのだ。

 そういうわけであまり心配はしていなかったりする。

 筆記試験のほうは……。


「じゃあレポートのほうは?」


「うっ、あっちは苦手だなぁーオレ……」


「オイラもだ」


「ふ~ん。レノア、お前は?」


「わたしも少し不安です。というか、やっぱり初めてだから緊張します」


 定期試験には、このAクラスにだけを対象にした課題がある。

 それがレポート課題だ。

 自分で何か一つテーマを決めて、それについて考察するという内容なのだが、これを大勢の前で発表しなくてはならない。

 発表の場には全校生徒と教員に加え、外部から魔術師や国の重役も出席される。


「まぁなんだ。俺も手伝うから頑張ろう」

 

 俺も魔術のレポートなんて書いたことないんだよなぁ。

 このときばかりは俺も、生徒たちに頼りないと思われたかもしれない。

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