77.ボーナスタイム

 ダンジョン探索が終わったら、普通来た道を戻らなくてはいけない。

 何らかの装置があって外に出られる場合もあるけど、基本的には同じ道を逆走するのがセオリーだ。

 そして案外、行きよりも帰りのほうが大変だったりする。

 仕掛けが復活していたり、疲れて全身が鉛のように重たくなっているからだ。

 生徒たちもそれは同様で、みんな今すぐ横になりたいという顔をしていた。


「仕方がないな~」


 もう十分に頑張ってもらったし、これくらいは楽しても良いだろう。

 そう思った俺は、全員を転移魔術で地上に移動させた。

 最初から何かあったときのために、脱出できるように準備しておいたのが役にたった。


 宿泊施設に戻ったら、夕食が待っていた。

 今回は俺とユノアが作ったわけじゃなく、ホテルの従業員に食材と場所を用意してもらっていた。

 いわゆるバーベキューというやつだ。

 頑張った後には腹が減る。

 腹が減っては明日からまた頑張れない。

 すぐに寝たい生徒もいたようだが、半ば強引に食事の席へつかせた。


「えーみんなお疲れ様! 良く頑張ったな! 今日の経験は、お前たちにとって有意義なものになるだろう」


「なぁおい、何であの人は元気なんだよ」


「知らないわよ。最後まで戦ってたのにね……。ほんとこっちが聞きたいくらいよ」


 俺が全体に向けて話している姿を見て、イズキとミズキがひそひそと話しているようだ。

 彼らから見れば、俺は全然疲れていないように見えているらしいな。

 実際、本当にあまり疲れていなかったりする。

 旅をしていた頃に比べれば、これくらい何とも思わない。

 いずれ彼らにも、そう思えるときが来るのだろうか。


「さて、丁度良いから明日からの予定を説明するぞ」


 全員が食事の手をピタリと止めた。

 ダンジョン攻略で出し切ったのに、まだ先があるのかと思っている顔だ。

 そもそもまだ初日、たった一日しか経っていない。

 どれだけキツイ研修になるとかと、身構えている。


「そんなに構えるな。明日からは自由行動にするから」


「えっ、自由行動? それってどういう意味なの?」


 ネロが首をかしげて聞いてきた。


「そのままの意味だよ。明日からの四日間は自由! 遊ぶもよし、魔術の練習するもよし! 残りの期間は好きに使ってくれってことだ」


 俺がそういうと、みんなキョトンとした表情になった。

 身構えていた分落差が激しい。


「もともとそういう予定だったんだよ。ダンジョンで実戦経験をつけてもらって、あとは頑張った分楽しんでほしいと思ってさ」


「い、いいんですか?」


「もちろんだよレノア。他の皆も良く頑張ったな。前回の研修と合わせてお疲れ様。あとは楽しもう」


「――や、やったぁー!!」


 やれやれ、一瞬で元気を取り戻したらしいな。

 しかし本当に良く頑張ったと思うよ。みんな着実に成長している。

 だけど魔術師である前に学生で、まだ子供なんだ。

 遊べるときには遊んでおいたほうが良い。


 それから四日間は、めいっぱい遊びつくした。

 俺とユノアも生徒たちに混ざって遊んで、楽しい時間を過ごした。

 一日中遊ぶなんて経験は初めてだったから、生徒たちよりも俺のほうがずっと疲れたよ。

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