76.水霊の宝玉

 切断された首が宙を舞い、身体が倒れると同時に消滅した。

 この消滅によって閉ざされた扉に変化が生じる。

 石造を破壊したときのように、扉全体が煌々と輝きだした。


「開いたか」


「クロ先生ー!」


 生徒たちが駆け寄ってきた。


「みんなお待たせ」


「クロ先生ずごかった! 何ていうかもう、凄すぎてわけわかんないですよ!」


「ははははっ、なんだそりゃ」


 取り乱しすレノアに笑ってしまう。

 疲れなんてふっとんでしまったように、生徒たちはワクワクしているようだった。

 この先にある宝にではなく、いつか自分たちも俺のように戦える日が来るのかという、期待に満ち溢れた表情をしていた。


「さぁ行こうか。お宝とご対面だ」


 俺は扉に目を向けた。

 これだけ強力な仕掛けに守られていたのだ。

 きっと相当貴重なものが眠っているに違いない。


「開けるぞ」


 扉に手を置いた。

 ぐっと押し込み重さを感じ、ギィギィという音をたてて開いていく。

 開けた直後は真っ暗だった。

 それが最後まで扉を開け切ると、左右にある灯篭に青い火が灯り、部屋を明るく照らした。


「先生! あれ!」


「ああ」


 部屋の中には、一つだけ石で造られた箱があった。

 逆に言えばそれ以外には何もない。

 間違いなく、思考するまでもなく、あの箱に宝は隠されている。

 俺たちはトラップがないか確認しつつ、慎重に箱へと近づいた。

 そして――


「「おぉー」」


 箱のふたを開けた。

 中には大量の黄金が入っていた。

 黄金の剣、黄金の器、黄金の装飾品。

 箱の中身を金額にすると、アルステイン王国をそのまま買い取ってしまえるほどの額になるだろう。

 これには貴族の家系に生まれた生徒でも驚愕する。


「おっ、これは――」


 その中から機微飾りを見つけた。

 他と同じく黄金で造られた首飾りには、十数個の宝石がはめ込まれている。


「やっぱりこれ魔石だな」


「本当だね」


 ユノアが覗き込んでそう言った。

 他の生徒たちの視線も集まり、ゴルドが質問してきた。


「魔石って?」


「魔力を溜め込める特殊な宝石だよ。魔道具の動力にも使われていて、世界でも数が少ない貴重な宝石だ」


「へぇ~ すごい石なのかぁ」


「あんまり理解してないな。かなり便利なものなんだぞ。こいつに魔力を貯めておけば、自分の魔力が尽きても戦える。自分の魔力じゃ足りない魔術も、これに貯めた魔力も合わせれば使えるかもしれないしな」


 これを言ってようやく理解したようだ。

 ちょうど生徒分はあるみたいだし、あとで加工して皆に配ろうか。

 ちなみに俺とユノアはもう持っている。

 他にもいくつか興味深いものが入っていた。

 特に気になったのは、手のひらより大きな青い水晶だ。


「それって水霊の宝玉だよね」


「やっぱりそうなのか。お前がいうなら間違いなさそうだな」


 水霊の宝玉とは、水の精霊の力を封じ込めた石。

 魔力を流し込むと、水を司る霊獣を召喚することができるのだ。

 精霊使いであるユノアには、この宝玉から水の精霊を感知できる。


「クロ先生、霊獣ってどういう姿をしてるんですか?」


 ユーリが尋ねてきた。


「さぁな。見たほうが早いだろ」


 俺が魔力を注ぎ込むと、水晶は青白い光を放ちだした。

 そして水晶から大量の水が噴出し、一箇所に集まって水ではないものに変化していく。


「ど、ドラゴン!?」


「なるほど、水の竜か」


 長い蛇のような水のドラゴンが出現した。

 これには生徒たちもたじたじ、俺とユノアはいつも通りのテンションだった。

 こうして俺たちのダンジョン探索は、様々な経験と宝を得て終了した。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます