73.最終関門

 階段はずっと下まで続いているようだ。

 上から覗き込んでも底まで見ることはできない。

 そしてここからは、俺とユノアも知らない領域だ。


「さて、進もうか」


 そう言って生徒たちを見た俺は、階段へ踏み込んだ足を止めた。

 みんなさっきの戦闘でかなり疲れているようだ。

 息が荒くなっていたり、疲労を感じさせるような表情の生徒が多かったことに気付いた。


「少し休憩してからだな」


 その場で腰をおろして休憩させた。

 生徒たちからどうやって攻略したのかを聞くと、みんな嬉しそうに答えてくれた。

 大変な戦いだったことは確かだけど、作戦を考えたり、みんなで協力して乗り切れたことはとても良い経験になっただろう。

 ただ、すでにやりきった感覚でいた所為で、この先もまだ続いていると知ってどっと疲れがきてしまったようだ。


「大丈夫だ。おそらく次でラストだからな」


「どうしてわかるんですか? クロ先生たちも、この先は知らないんですよね?」


 レノアが質問した。


「知らないぞ。だけど、この先にどの程度の空間が広がってるかくらいはわかるからな。これまで進んだ道のりも考慮すると、そんなに長くはないよ」


「それじゃあいよいよ……」


「ああ、次が最後の関門。それを超えればゴールだ」


 ダンジョンの終わりにたどり着く。

 つまり、隠された宝とご対面することができるというわけだ。

 これだけしっかり守られていた宝は、一体どんなものなのだろうか。

 苦労して進んできた分、生徒たちの期待値は高い。


「よし、休憩は終わりだ。そろそろ先へ進もう」


 時刻を確認すると、あと一時間ほどで夕刻にさしかかる頃合になっていた。

 俺の予定では日が落ちるまでにここを出たいと思っている。

 まだ急ぐ必要はないが、もたもたしているわけにもいかないのだ。


 長い階段を下りていく。

 一歩一歩近づくにつれて、俺とユノアはある感覚が強まっていくことを感じていた。

 鋭く喉に突き刺さるような感覚だ。


「ユノア」


「うん。わかってるよ」


「一応警戒しておいてくれ。いざとなったら……」


「大丈夫。みんなはボクが守るから、君は思う存分戦って良いよ」


「助かるよ」


 次第に強まっていく感覚は、これまでに何度も経験したものだった。

 階段は途中で途切れていた。

 そこからは一本の廊下が続いていて、先には明るい出口が見えている。

 進むとそこには、真っ白の広い空間が広がっていた。


「止まれ」


 部屋に踏み込む手前で、生徒たちを立ち止まらせた。

 これ以上進めば巻き込まれてしまうからだ。

 行く手の先には黄金の装飾が施された扉がある。おそらくこのダンジョンの最深部だろう。

 そして――


「白い……騎士?」


 レノアが気付いた。

 扉を守るように、白銀の鎧を纏った騎士が立っていた。

 鋭い感覚の正体はあの騎士だ。

 間違いない、この感覚は強者から発せられるものだ。


 あの騎士は――強い。

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