71.三頭の竜像④

 約束の十分が経過したことで、生徒たちは覚悟を決めなくてはならなくなった。

 意を決して、満を持して部屋へ入ると、竜の石造が生み出され大量の砲門が照準を合わせた。


「進むぞ!」


 ローランの掛け声で一斉に駆け出した。

 作戦を実行するためには、なるべく全員が近づかなくてはならない。

 砲撃が来る前に指定の位置まで近づくつもりだ。


「よし! 頼むぞユーリ!」


「はい!」


 部屋の中央付近まで接近した生徒たちは、攻撃メンバーの四人以外でユーリを囲んだ。

 七人が一斉に魔力を高め、半円形の結界を展開。

 それと同時に攻撃メンバー四人には、ユーリから風の精霊の加護が付与された。

 すべての準備が整った直後に、装置の砲撃が開始された。

 数発が結界に着弾し、衝撃と爆音が響き渡っている。


「みんな大丈夫か!」


「こっちは良い! てめぇらは自分の役割に集中しやがれ!」


 振り返ったローランにイズキがそう言った。

 攻撃を受けたが結界は無傷のようだ。

 ローランは軽く笑い、そして真剣な表情に変わって石造を見た。


「いくぞ!」


 四人が攻撃を開始した。

 レノアはお得意の炎魔術で炎弾を生み出し、連続して石造に発射している。

 ミシェルは水の塊を超高速で弾丸のように撃ちだして攻撃している。

 ローランは光魔術で光球を生成。自らの周囲に浮遊させ、そこから魔力弾を放っている。

 そしてミズキは、炎、水、風、大地など、様々な魔術を組み合わせ打ち出し、威力を掛け算しながら連続攻撃を繰り出している。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 彼らが戦闘を開始した頃、俺とユノアもそれぞれの部屋に入っていた。


「さてと、やりますか」


 正直なことを話そう。

 実はこの仕掛け、俺一人でも攻略可能なのだ。

 なぜなら俺には、この眼があるから――


 装置は起動直後にまったく動かなくなった。

 すべての砲門が開き、結界も作動しているのに動かない。


 魔術王の眼、俺が持つ特別な眼は、あらゆる魔術を読み解き干渉できる。

 この装置を動かしているのは、どうやら古代の術式のようだが、どんな術式だろうと、それが魔術であるならこの眼で制御できてしまう。

 こうして無防備に近づいても攻撃されないのは、この眼で展開した術式を停止させているからだ。

 

 どうして最初からそうしなかったのかって?

 この装置は一度突破すると完全に破壊されてしまうんだよ。

 そうしたら生徒たちに訓練として提供できなくなるだろ。だからあえてこれ以上先には進まなかった。


「あとは連絡待ちだな」


 一方ユノアも戦闘を開始していた。

 彼女の戦闘能力にはムラがある。

 契約している精霊王シルフが強力的かどうかで大きく変化するからだ。

 そして今日は――


「うん。行くよ――シルフ」


 彼女の瞳が空色に変化した。

 さらに強風で全身が覆われ、ゆっくりと宙へ浮かんでいく。

 彼女に対して砲撃の降り注がれるが、すべて強風のヴェールに弾かれた。

 無傷の彼女は、おもむろに右手を前にかざした。すると纏っていた強風がさらに強まり、全方位に向かって拡散していった。

 強風はカマイタを内包したまま、部屋中へと広がっていく。

 触手のように伸びる砲門が次々に切断され、最終的には竜の石造だけが残った。


「これで良し」


 すべての砲門が破壊され、石造を覆う結界も破壊された。

 丸裸にされた石造は、もはや何もできない。たった一撃で完全無効化されてしまったのだ。

 これがユノア、精霊王の契約者の力である。

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