70.三頭の竜像③

「俺とユノアで残りの部屋を担当するから、お前たちは真ん中の部屋を頼む。作戦を考える時間は必要か?」


「あると嬉しいです」


 レノアが答えた。


「よし、それじゃ今から十分やる。その間に作戦を考えてくれ。十分経ったら俺たちも戦闘を開始する。破壊できるタイミングになったら、レノアお前が俺たちに連絡するんだ」


「わかりました」


「一応言っておくが、無茶な作戦は考えるなよ。怪我なんてしたら元も子もないからな」


 生徒たちは黙って頷いた。

 緊張しているのが伝わってくるけど、無理だとは思ってなさそうだ。


「行こうか、ユノア」


「うん」


 俺たちは彼らに背を向け廊下を戻った。


「今さらだけど、お前のほうはいけるか?」


「うん。今日はちゃんと起きてるみたいだからね」


「なら問題なさそうだな」


 そんな会話をして、俺は右の道へ、ユノアは左の道へ別れていった。

 俺たちがいなくなった後で、生徒たちの作戦会議は始まった。

 中心となって進める役目はローランが引き受けたようだ。


「みんな、さっきの戦闘は覚えているな?」


「もちろんだぜ。あんな激しい戦い、そう簡単に忘れるかよ」


「そうだな。わかっていると思うけど、僕たちにあんな戦い方はできない」


「だろうな。ありゃークロ先生だからできたんだ。オレたちには無理だぜ」


 ローランとイズキのやり取りを、他の生徒たちは頷きながら聞いていた。

 そして具体的にどうするかという話に移行した。


「やっぱり地道に削っていくしかないよね」


「わ、私もレノアちゃんと同じ意見」


 ミシェルがそう言った後で、イズキが戦闘風景を思い出しながら言う。


「んじゃ、どうやってあの砲撃を突破すんだ?」


 生徒たちはう~んと頭を悩ませた。

 俺のように防御すれば良いと言う意見が出たが、高威力な攻撃を連続で受けられるほど、今の自分たちは強くないと却下された。

 次に防御できないなら躱せば良いという発言が飛び出したが――


「いやいや、あれだけ撃たれてたら無理だよ」


 ネロがそう言い、すぐに却下された。

 続けてゴルドが意見する。


「だったらペアを組むのはどうだ? 片方が攻撃に専念して、もう片方が防御に専念するとか」


「それじゃ防御する側の負担が多すぎる」


「そっか~」


「でも、攻撃する人を絞るのはアリだと思います!」


 却下されかけたとき、ユーリが手を挙げて意見を口にした。

 それに対してローランが尋ねる。


「何か良い作戦が思い浮かんだのか?」


「はい。私の精霊魔術なら、他者に風を纏わせて、とんできた攻撃を逸らすことができます」


「本当か!?」


「はい。でも制御が難しくて、一度に使えるのが五人までなんです。あと離れすぎると効果が届かないので、私自身がある程度装置に近づかないといけません。そして使用中は、制御に集中するので無防備になります」


「なるほどな。つまり、高威力な遠距離攻撃が可能な者を四人選び、その五人は攻撃に集中する。他の者は、動けないユーリを守るため結界を張る役か」


 一人の作る結界では、あの砲撃の雨を受け続けられない。

 しかし優秀な彼らが六人も集まれば、ある程度の時間を稼ぐことはできるだろう。


「よし、では作戦は決まりだな。あとは攻撃のメンバーだが――」


 有効な攻撃手段を持っているとして選ばれたのは、レノア、ミシェル、ローラン、ミズキの四人だった。

 レノアとミシェルはAクラス主席と次席。

 王族であるローランは優れた魔力を持っている。

 そして意外かもしれないが、ミズキの魔術の多彩さは、Aクラスでもトップなのだ。


 こうして十分が経過した。

 

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