68.三頭の竜像①

 その後はしばらく道なりに進んでいった。

 鏡の部屋から通じていた道は一本しかなく、軽く下へ傾斜しているようだった。

 次第に傾斜がなくなり、何もないまっすぐな道が続いていく。


「歩きながら聞いてくれ。この先に俺とユノアで突破できなかった部屋がある」


「先生たちが!?」


 声を上げたレノアを筆頭に、他の生徒たちも目を丸くして驚いていた。

 そしてローランがこう質問してきた。


「それほどの強敵がいたのですか?」


「いいや。まぁ強敵ではあったんだけど、問題なのは仕掛けのほうかな」


「仕掛け?」


「そう。あれは二人じゃ絶対に突破できない仕掛けだった。最低でも三人はいないと駄目だな」


「一体どんな仕掛けだったんですか?」


「それはまぁ、実際に見せてから説明するよ」


 話しながら足を進めていくうちに、気付けば目的の場所までたどり着いていた。

 真っ白なタイルに覆われた大きな部屋だ。

 奥には大きな扉があって、硬く閉ざされてしまっている。


「あの扉の先に道があるのか」


「待てイズキ。それ以上は進まないほうが良い」


「えっ、なんでだよ」


「この部屋に一歩踏み入れた瞬間、侵入者を撃退する装置が作動するんだよ。それを破壊しないと先へは進めないんだが……。普通に破壊するだけじゃ駄目だったんだよ」


 生徒たちは頭にクエスチョンマークを浮かべていた。


「見せたほうが早そうだな」


 百聞は一見にしかずと言うし。


「今から装置を起動させるから、しっかり見ておいてくれ。あとでお前たちだけで戦ってもらうからな」


「えっ、ちょっ、それどういうことだよ!」


「悪いなイズキ。もう入っちゃったから、一先ず見ることに集中してくれ」


 扉のある壁に、紫色で術式が展開された。

 そこから巨大な竜の首の形をした石造が伸びてきて、さらにその周囲に石の管が触手のようにうじゃうじゃと出現した。


「気持ちわりぃ……」


 イズキが感想を漏らした瞬間、石の管の先から魔力弾が発射された。

 狙いは侵入者である俺だ。

 連続で発射される砲撃に対し、俺は自身の周りに結界を展開して防御した。

 そしていつの間にか、竜の頭をした石造周辺に、俺と同じような結界が展開されていた。


「この装置は、あの石造を破壊すれば停止する。そのためにはあの結界を破壊しなきゃならない」


 石造を覆っている結界は、一定ダメージの蓄積で破壊されるらしい。

 ちなみに俺は平然と防御してるけど、この砲撃もかなりの威力だ。自信がないなら躱すことをお勧めするよ。

 さて、防御しているだけでは攻略できない。


「そろそろ反撃しようかな」


 俺は自身の後ろに複数の術式を展開させた。

 そこから相手の装置と同じように、連続で魔力弾を発射させた。

 これはとても初歩的な魔術で、魔力を圧縮して砲撃として放つだけ魔術だ。簡単な魔術ではあるが、その分術者の魔力量やセンスが反映される。

 高威力かつ、俺のように複数を展開して連続発射は普通できない。

 生徒たちは唖然として声も出さずに魅入っていた。


「こうやってごり押しても良いし、敵の砲門を地道に破壊していくのもアリだな。さっ、そろそろ終わりにしよう」


 攻撃の手を一気に加速させた。

 結界のダメージ蓄積が一定量を超え、ガラスが割れる音をたてながら弾けとんだ。

 さらに攻撃を一点に収束させ、竜の石造を木っ端微塵に破壊した。


「ふぅ~ とまぁこんな感じだ」


「すご過ぎるよクロ先生!」


 レノアが駆け寄ってきてそう言った。

 続けて他の生徒たちも歩み寄ってきて、最後に近づいたユーリが疑問を口にする。


「今って破壊したんですよね? 進めないんですか?」


「そうなんだよ。ほら、あそこの扉は開いてないだろ」


 仰々しく設けられた扉は、現在はきっちり閉じたままだ。


「さっきの装置も、あと一分もすれば復活するよ。だから一旦廊下へ出るぞ」


 俺は生徒たちは誘導して、部屋に繋がっていた廊下へ戻った。

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