67.鏡の部屋

 次々と珊瑚の兵隊が押し寄せてくる。

 今の生徒たちなら簡単に倒せる相手だが、どれだけ倒しても一向に数は減らなかった。

 このままでは埒が明かないと考えた彼らは、破壊しながら前へ進むことにした。

 そしてこの判断は正しかった。

 敵との接触から五〇メートルほど進んだ地点に、珊瑚の兵隊を召喚していた術式が展開されていたのだ。

 それを超えてしまえば、もう新たに兵隊が造られることはない。


「やっと終わったよぉ~」


 ネロがぐったりしながら地面に膝をついた。

 簡単に倒せる相手でも、終わりがない戦いは疲れるものだ。


「みんなお疲れ。案外早かったな」


「クロ先生、もしかしてご存知だったのですか?」


 トールが質問してきた。


「まぁな。下見にきたとき、途中までは進んだから」


「だったら早く教えてよぉ~」


「何言ってんだネロ。それじゃ訓練にならないだろ」


「うぅー」


 生徒たちを五分ほど休憩させた後、さらに奥へと進ませた。

 次の部屋では身体ではなく、頭を使わなくてはならないだろう。


「な、何この部屋!」


「綺麗……」


 ネロが驚き、ミズキが魅了された部屋は、複数の鏡がミラーボールのように重なって造られた球状の部屋だった。

 鏡にはいくつか道らしき穴が映っていた。


「あの中から本物の入り口を探し出すんだよ」


「すごい数……本物は一つだけなの?」


「そうだよミシェル。あとは全部、鏡によって反射された虚像にすぎない」


 球状の部屋の中には、ミシェルが目を回しそうになるほどたくさんの黒い穴が映っていた。


「探すだけなら簡単だろ!」


 意気揚々とイズキが一歩を踏みだした。

 その瞬間、すべての鏡たちが一斉に回り始めたのだ。


「な、なんだよこれ!」


 次々と鏡の場所が変わってしまう。

 どこまでもミラーボールのような部屋だった。


「こんなの探せるかよ!」


 さっきまで余裕そうな顔をしていたイズキも、これには呆れてしまっていた。

 ただ回っているだけなのだが、数が多いことと鏡であることが相まって視覚を混乱させるのだ。


「ほらほら、さっさと探しに行く」


「えぇ~ ちなみにクロ先生は見つけられたの?」


「ああ」


「どのくらいかかったんですか?」


「えっ、どのくらいだったかな。ユノア覚えてる?」


「たしか十秒くらいだったよ」


 質問したネロとユーリは同じような顔をして驚いていた。

 正解を見つけ出す方法はたくさんある。

 俺の場合は、鏡で反射される光を魔術で生み出して、通り抜けてる場所を探した。

 ユノアだったら、風を充満させて通る場所を探し出せる。

 そうやって考えれば簡単なのだが、見た目のインパクトでわからなくなってしまうのだ。

 さて、生徒たちはどんな解決策を思いつくかな?


「一応ヒントを出しとくぞ。ここにあるのはただの鏡だ。特別な魔道具じゃなくて、ただの鏡だけだ」


 俺が与えたヒントはそれだけだった。

 数分は悩むと予想していたが――


「わかったぜ!」


 案外早く回答にたどり着いたようだ。

 イズキが声を出して、他の生徒が彼に注目した。

 

「全部鏡だってならよぉ。壊しちまえばいいんじゃねぇか?」


 思った以上に大胆な作戦だった。

 しかしこの方法も正しい。

 俺の与えたヒント通り、この鏡はすべてただの鏡なのだ。

 これらの所為で惑わされるのなら、全部破壊してしまえばいい。

 一部からは反対意見も出たようだが、だったらやってみようということで実行に移された。

 そして――


「ほらな!」


 到着からわずか十五分で、鏡の迷路を脱出することに成功した。

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