66.珊瑚の兵隊②

「なっなんだあれ、珊瑚の……人形?」


 現れたのは珊瑚で形が形成された兵隊だった。

 複数の珊瑚が集まって人の形を造っている。

 本来は美しいはずの珊瑚も、あれだけ集まっていては不気味としか言えない。


「あれは珊瑚の兵隊だ。このダンジョンを守る役割を担っている。倒していかないと、先には進めないぞ」


「倒していかないと、って! なんでクロ先生たちは下がってるんですか!?」


 そう言ったのはレノアだった。

 俺とユノアがいつの間にか最後尾に下がっていたことに気付いたようだ。


「お前たちで倒してみろ。俺たちはここで見てるから」


「そ、そんないきなり!」


「文句言ってる暇があるなら前を見ろ。敵は待ってくれないぞ」


 そうこうしている間にも、珊瑚の兵隊は徐々に侵攻してきていた。

 もうあと数秒も経てば接触する距離だ。


「大丈夫だ。お前たちならやれる」


「よっしゃ! ならやってやろうじゃねぇかよ!」


 しり込みする生徒たちの中で、最初に飛び出したのはイズキだった。

 彼は強化魔術で身体を硬化させ、思いっきり飛び上がって珊瑚の兵隊に殴りかかった。

 そして強化されたこぶしは、見事に珊瑚の兵隊をばらばらに破壊した。


「おっ、意外と弱いぞこいつら!」


「オイラもいくぞ!」


 イズキに触発され、次に飛び出したのはゴルドだった。

 彼は練成魔術を使用し、両手持ちのハンマーを生成した。

 それを持って大きく振りかぶり、珊瑚の兵隊めがけて振り下ろした。

 すると珊瑚の兵隊は、バキンッという大きな音をたてて破壊された。


「ほんとだ! 全然怖くないぞ!」


 彼らがそう感じられるのは、モッテル山脈での研修の成果だ。

 険しい環境や素早い動きに身体が慣れたお陰で、ある程度の相手なら対応できるようになっていた。。

 勇気ある二人の行動に感化され、他の生徒たちも戦闘に参加した。

 そしてすぐに異変に気付くことになる。


「みんな待て!」


 最初に気付いたのはローランだった。

 兵隊の様子がおかしい。

 破壊されたはずのパーツが、勝手に動き出して集まっていた。


「まさか再生してるのか?」


 そのまさかだった。

 彼の口にした通り、珊瑚の兵隊はパーツを寄り集めて再生していたのだ。

 しかも最初の個体よりもずっと大きい。

 どうやら数体が一つにまとまることで、より大きな兵隊へと変貌したらしい。

 物理的な破壊が逆効果だと判断した生徒たちは、一旦攻撃の手を止めた。


「わたしに任せて! 集まって再生するなら――」


 レノアが魔術で炎を生み出した。

 そう、再生と言っても損傷を修復しているのではなく、飛び散ったパーツを集めなおしているだけだ。

 つまりパーツが残らないように破壊すれば、再生されることはない。

 彼女の炎は、珊瑚の兵隊を灰になるまで燃やし尽くした。


「やった!」


「いいぞよくやった! その調子で次も頑張れよ」


「えっ、次?」


 灰となった兵隊の後ろには、さらにゾロゾロとたくさんの兵隊が歩いてきていた。

 戦いはまだ始まったばかりのようだ。

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