65.珊瑚の兵隊①

 俺とユノアが見つけた海底ダンジョンは、透明な結界で覆われていた。

 出入りは自由にでき、中には空気が満ちていた。

 どうやらこの結界は、海水のみをはじき出している様だ。

 全体は神殿のような見た目をしていて、入り口らしき場所が一箇所だけある。他に人が出入りできそうな場所はなかった。


「すっげぇ~ ダンジョンなんて始めて見たぜ」


 イズキがキョロキョロしながらそう言った。

 他の生徒たちも同様に、未知の建造物に興味津々の様子だ。

 予想通りの反応を見せてくれて、俺は満足しながら彼らを眺めていた。

 するとユーリが近寄ってきてこう尋ねてきた。


「クロ先生は知ってたんですか? ここにダンジョンがあるって」


「いいや、見つけたのはたまたまだよ。一応陛下にも確認して見たんだが、これだけ深い場所まで調査してなかったらしくてさ。たぶん俺たち以外には知らないはずだぞ」


「ってことは、中に何か眠ってるかもしれないってことですよね!」


「だろうな。ダンジョンはそもそも、何かを隠したり保管したりするために造られるわけだし」


「お宝ってことか! 何があるんだろ」


「さぁな。ゴルドは何だと思う?」


「オイラ? オイラはやっぱり金銀財宝だと思うな!」


「なるほど。じゃあラミリスはどう思う?」


「ワタシですか? ワタシはえっと、特別な魔道具とか魔道書だと思います」


 俺がこの話を生徒たちに振ると、自分なら何を隠すかという話題になった。

 それから五分ぐらいかけて、その話題で盛り上がった。

 大体が生徒が物をあげる中で、ルークが一人だけ封印された魔獣と言ったときは、彼の個性を強く感じた。


「さっ、ここから先は進みながら話そうか。みんな俺の後に続いてくれ」


「はーい! ねぇクロ先生!」


「なんだ? ネロ」


「先生ってダンジョン初めてじゃないの?」


 俺たちは現在、ダンジョンの廊下を歩いている。

 入り口から一本だけまっすぐに伸びていた廊下だ。

 周りに窓や入り口は見当たらない。

 壁には光る球体がはめ込まれていて、そのお陰で視界が開けている。


「そうだけど。どうしてわかったんだ?」


「だって全然落ち着いてるんだもん! あたしたちはこーんなに驚いてるのにさ!」


「あー、なるほどね」


 彼女に言われて気付いた。

 確かに俺は、ここ以外のダンジョンを知っている。

 旅をしていた頃、成り行きで三箇所ほど攻略したことがあった。


「一箇所は普通に財宝だったけど、他の二箇所にあったのは魔道具だったな」


「へぇ~ どんなだんの?」


「それは秘密」


「えぇー教えてよぉ~」


「駄目」


 ネロはせがんできたけど教えなかった。

 意地悪とかじゃなくて、教えたら俺の正体がバレルからな。


「まぁ共通して言えることは、どのダンジョンも中々の難易度だったってことかな。敵もたくさんいたし」


「えっ、敵がいたの?」


「当たり前だろ、ダンジョンなんだから。ここにもいるぞ」


「えっ――」


「ほら、前見ろ。敵が来たぞ」


 俺が何気なくそう言うと、生徒たちに緊張が走った。

 前方から複数の影が接近してきている。

 奥から見えた影は、徐々に全貌をあらわにしていった。

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