63.二度目の課外研修

 一週間後。

 何事もなく日にちが経ち、二度目の課外研修を迎えた。

 生徒たちは学校の前に集合している。


「この前と同じ方法で行くぞ~」


 生徒たちに手を繋がせ、転移魔術で目的地までとんだ。

 今回の研修先はリアスト海岸である。

 天気は良好、波も穏やかで申し分ない環境だ。


「うわぁ~ 海だぁ!」


 はしゃぐネロ。

 前回のモッテル山脈と違い、危険な感じがしない所為か、みんなの表情はとても落ち着いていた。

 ちなみに、まだこれから何をするか伝えていない。


「先に荷物をおいていこうか」


 生徒たちを宿泊先に案内した。

 海岸から歩いて五分ほど行った場所に、高級ホテルのような外見の建物がある。

 十階建てで、中も外見に負けないくらい綺麗だ。

 観光客が宿泊するために造られているため、これだけ綺麗らしい。

 今の時期はまだ観光客もいないから、生徒たちには一人一部屋をあてがった。


「荷物を置いたら、水着に着替えて集合してくれ」


 そういう指示を出して、数分後に海岸で再集合した。

 生徒たちには水着に着替えてもらったが、やはりまだ肌寒いようだ。

 一部には、そんなの関係ないと言わんばかりにはしゃいでいる生徒もいるけど。


「さて、これから皆にはこの海に潜ってもらうぞ」


「もしかして、今回は水中で動ける訓練をするんですか?」


 レノアが手を挙げて質問した。


「ちょっと違うよ。確かに水中で動けるようにはなってもらうけど、それはあくまで前準備だ」


「前準備?」


「う~ん、まぁ詳しくは実際に見てもらったほうが早いだろ。まず皆には、水中で呼吸ができるようになってもらうか」


 それから二時間ほどかけて、水中呼吸の魔術を習得させた。

 飛行魔術を違い、自分でコントロールする必要がない分、習得に時間はかからなかった。

 予想より早く終わったので、ついでに水を蹴って移動する魔術を教えた。

 これでも飛行魔術と似ていたお陰で、すぐに覚えることができたようだ。


「よーし! これで準備完了だな」


「クロ先生、そろそろどこに行くのか教えてもらえませんか?」


 またレノアが手を挙げた。

 俺はちょっと意地悪な顔をして首を横に振った。


「駄目だ。こういうのは実際に見たほうが良い」


「えぇ~」


「まぁでも、少しくらいは教えておこうか。今から向かうのは海底だ。地上の光が届かなくなった場所。そこに目的のものはある」


「どのくらい深いんだ?」


 つぎに質問したのはゴルドだった。


「う~ん、ちゃんと測ってないけど、たぶん三〇〇メートルはあったかな」


「そんなに深いのか!」


「そんなに深いんだよ。だから水圧も高い。お前たちなら平気だと思うけど、魔術で身体を強化することは怠っちゃ駄目だぞ。何もしないで潜ったら、俺でもぺちゃんこになるからな」


 ゴルドはごくりと息を飲んだ。

 少し脅すように言ったけど、そこまで心配はしていない。

 彼らのレベルならその程度の水圧に耐えるくらい余裕だろう。


「さぁ。前置きはこの辺にして、さっそく潜りますか」


 これから始まるのは、研修と言うよりは冒険に近いだろう。

 それを見た瞬間、生徒たちは興奮すること間違いなしだ。

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