61.つかの間の休日

 課外研修を終えた生徒たちは、二日間の休日を過ごしていた。

 過ごし方はそれぞれで、疲れて一日中ごろごろしたり、変わらず勉学に努めたり、まだ動けたのかと思えるくらい遊んだりしていた。

 そんな中、俺とユノアは次の研修先について話し合っていた。


「ふぅ、一先ず無事に終わってよかったね」


「そうだな。でも次はどうしようか。実際ノープランなんだよな」


「勢いでどっちも行こうなんて言っちゃうからだよ」


「それは反省してます」


 次の研修先は海だ。

 実を言うと、研修先が海になろうと山になろうと、どっちも同じことをするつもりだった。というのも、さすがに五日間だけじゃ、飛行魔術を使いこなすのは難しいと思っていたからだ。

 しかし思った以上に彼らは優秀で、山での研修で及第点を迎えてしまった。

 これは良い誤算なのだが、次を深く考えていなかった身としては、正直焦りしかない。


「次はいつ頃始めるつもりなの?」


「一応再来週からだよ。また五日間で、場所も決まってる」


 リアスト海岸、それが次の研修先の名前だ。

 モッテル山脈とは真逆に位置しており、距離はさほど変わらない。

 王国が管理する海岸の中では一番広く、沖までの距離が短い。

 あと一ヶ月もすれば、一般客に遊泳場として解放される。


「あそこは基本観光スポットだから、訓練する場所ってわけでもないんだよ。だから何をしようかほんとに迷ってる」


「いっそのこと遊ばせてあげれば? みんな頑張ったんだし」


「それもまぁいいかもな。でもせっかく研修で行くんだから、何か身に付けて帰ってほしいだろ」


「そうだね。それにしても……」


 会話の途中、ユノアが不意に微笑んだ。

 俺の顔を見て笑ったようにも見えたがなんだろう。


「俺の顔に何かついてた?」


「ううん、違うよ。何ていうか、君もすっかり先生になったんだなと思って」


「なんだよそれ。そういうならお前もだろ」


「うん。でも不思議だよね。ボクたちが、先生!なんて呼ばれるようになるなんてさ。旅をしてた時には、思いもよらなかったよ」


「そりゃな」


 あの頃の俺たちには、およそ未来と呼べるものが見えていなかった。

 毎日が必死で、現在を生きていくので精一杯だった。

 言われて見れば本当に不思議だ。

 今を生きることしか考えられなかった俺たちが、誰かの未来を考えているなんてな。


「人生ってわからないものだね」


「今さらだろ」


「ふふっ、そうだったね。ねぇクロト、明日一緒に海に行こうよ」


「それはまた突然だな。どうして?」


「再来週のための下見だよ。実際に行けば何か思い浮かぶかもしれないでしょ?」


「一理あるな。だけどお前、その理由って建前だろ」


「さすがクロト。そう、本当は君と一緒に海へ行きたい気分だからだよ」


「そういう理由なら喜んで」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます