59.次のステップへ

 モッテル山脈課外研修三日目の朝を迎えた。

 この日も最初は五〇〇メートルダッシュから始まり、朝食をとってから全員を集合させた。

 そこからさらに頂上までを、飛行魔術を使って往復させた。

 昨日散々飛び回って慣れたお陰で、全員が一時間以内に往復することができていた。


「さすがに三日目にもなると、多少は慣れてきたかな」


「いやいや、十分疲れますから!」


 ネロは大きく首を振ってそう答えた。

 昨日もそうだが、ずっと飛び回っていてかなり疲れたようだ。

 飛行魔術は、本来人間が使わないであろう感覚をたくさん用いる。だから普通に走ったりするよりも疲れてしまう。


「まぁでも、飛ぶのには慣れただろ?」


「そうですね。少なくとも恐怖心は感じません」


「ぼくも殿下と同じです。正直最初は怖かったのですが、飛んでみたら案外感じなくなりました」


「そうかそうか。だったら、ウォームアップは十分ってところかな」


「ウォームアップ……」


 ローランとトールはうっと身構えた。


「そんなに警戒しなくて良いぞ。今日からやる訓練は、半分遊びだからな」


 俺はそう言いながら、あらかじめ用意しておいた箱を彼らに見える位置に置いた。

 生徒たちの視線がその箱に集中したことを確認して、もったいぶるように封を開けた。

 中には赤と青、二色のゴムが敷き詰められていた。


「なんですかこれ」


「これはゴム風船だよ」


 質問に答えると、レノアが箱から一つ取り出して眺めた。

 これは何の変哲もないゴム風船だ。

 魔術的な仕掛けも、特別な素材も使っていない。


「こんな物を一体どうやって使うんですか?」


「こいつは的に使うんだ」


「的?」


「さっきも言っただろ? これからやるのは半分遊びなんだ」


 これから実施するのは、飛行魔術を使用中に他の魔術を使えるようにするための訓練だ。

 ルールはいたってシンプル。

 六対六のチームに分かれて、それぞれの色の風船を紐を繋いで身体に巻きつける。

 それを魔術を使って割り合う。


「範囲は俺が結界で仕切った空間内。どんな魔術でも使って良いけど、本人を傷つけるような威力は出さないこと。あと一瞬でも地上についたらリタイアな」


「相手チームを全滅させたほうが勝ちでいいんですか?」


 ユーリがぴんと手を挙げて質問した。

 俺は頷いて肯定した後、さらに説明を続けた。


「制限時間は五分とする。負けたほうはペナルティーとして、一〇〇メートルを走って往復してもらう。勝ったほうはその間休んで良し」


「あ、あの、チーム分けは……」


 今度はミシェルが質問してきた。

 あとペナルティーと言う単語に何人か反応したようだ。


「最初は俺が適当に決めるよ。あとはその都度変更していくかな」


「わ、わかりました」


「よーし! それじゃーさっそく始めようか!」


 結界を張ってフィールドを作り、適当にクジを作ってチーム分けをした。

 それからひたすらバトルを繰り返していく。

 自在に身体が動くように、空中戦闘が可能なレベルを目指してもらうつもりだ。


 このチーム戦は、最終日まで毎日続けられた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます