51.課外研修に行こう

 それはある日の午後、帰りのホームルームでの出来事だった。

 リベレーターの襲撃やら、俺とユノアのデート尾行やら、そういう色々が終わって一週間が経過した頃だ。


「というわけで、来週から課外研修をしたいと思います」


「「どういうわけですか!」」


 生徒から総ツッコミを入れられてしまった。

 まぁこれは仕方がない。だって、というわけでの前は何も言ってないな。

 本当に唐突にぽっと言っただけだった。


「こんな時期に課外研修なんてありましたっけ?」


「えっ……じゃあどういうことですか?」


 レノアは首をかしげて質問した。

 他の生徒たちも同じような反応を示している。

 ちなみに、こういう反応が見てみたくて、経緯を先に話さなかった。


「特別に時間を作ってもらったんだよ。俺が校長に頼み込んでな」


「どうしてですか?」


「どうしてって、お前たちに良い魔術師になってほしいからだよ」


 本音をいうとそれだけじゃない。

 先日の襲撃を経て、戦争が近いかもしれないと言う事情を知った。

 そうなったときに、自分の身を守れるようになんてほしいからだ。

 それもできる限り早くな。


「クロ先生!」


「なんでしょうローラン君」


「僕たちのことを考えてくれているのは嬉しいのですが、今の時期に行うのは危険ではないですか?」


「あー、襲撃されたばかりだからってことか?」


 ローランはこくりと頷いた。


「むしろ逆だ。襲撃された直後だからこそ、やつらもそんなに早く動かないだろうと思ってる。加えて何人か構成員も捕まってるし、当分は対策を練るはずだ。だから行うなら今がベストなんだよ!」


「たっ、確かに……そういう考えもあるのか」


 ローランは納得しかかっているようだ。

 実際はどっちでも変わらない。いつやろうが、襲撃されるリスクはほとんど同じだ。

 一番安全なのは、行わずに学校に篭るという選択肢なんだからな。

 だけどそれじゃあ学べないことがある。

 今は何でも良いから納得してもらって、課外研修に乗り気になってほしい。


「あと行く場所は王国が管理してる場所だ。陛下に頼んで、警備に関しても強化してもらうから、その辺は安心してくれ」


 これを言うと、ローランだけでなく他の生徒たちも納得し始めていた。

 良い流れがきたぞ。


「他に質問はないか? あっ、ちなみになにをするかは当日まで内緒な」


「「えぇ~」」


 ここでブーイング。

 しかしこれも予想通りだ。


「ブウブウ言わない! さてみんな、海に行きたいか? それとも山が良いか?」


 この質問をすると、五秒間ほど考えるため間が開いた。

 そして全員で、呼吸をそろえて答えた。


「「海!」」


「「山!」」


 普通に意見が割れた。

 この後はどっちが良いかでもめ出した。

 もはや行かないという案は出ないだろう。


「はい静粛に! お前たちの意見はよくわかった! だからどっちも行こう!!」


 もはや勢い任せだった。

 しかしここまですべて計画通りだ。

 

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