48.戦いを見据えて

「王国に直接審議を確かめるべきでは?」


「これは間違いなく国際問題、我々への宣戦布告ではないか!」


「攻め込まれる前に、こちらから動きべきではないか?」


「そうだ! 早急に兵を集めて対策を!」


 リベレーターとルグドニア王国に繋がりがあった。

 それがわかった途端、会議の場は大混乱に陥った。

 リベレーターの持つ戦力に加え、かの大国まで敵に回ってしまったのだ。

 焦りと不安から、攻撃的な意見も多く出ている。

 事実が事実だけに仕方がない反応とはいえ、これでは埒が明かない。


「静粛に!」


 だから陛下は一喝した。

 威嚇交じりの声は、騒ぐ彼らを押さえ込んだ。

 普段接している陛下は、やさしくて穏やかな性格だった。

 あんなに怖い顔をしているのは初めて見た。

 陛下にも、あんな顔が出来たんだな。


「結論を焦る気持ちはわかる。しかし落ち着くのだ。ここで慌てて動いても、なんの解決にもならない」


「しかし陛下、王国が敵に回ったのであれば、こちらも戦いの準備をするべきです」


「そうですよ! 攻め込まれれば勝ち目はないんです。ここで先手をうっておかなければ」


 陛下に諌められた重鎮たちは、再び攻撃的な発言を口にした。

 この流れでいくと、またさっきみたいな展開になりそうだな。


「陛下の言うとおりですよ」


 そう思った俺は、でしゃばって助け舟を出すことにした。


「今はまだ動くべきじゃない。王国が敵になったという確かな証拠もないんですから」


「何を言っているんだ君は! 証拠ならあるだろう!」


「捕らえた賊の証言なんて、一蹴されるに決まってるじゃないですか。そんなものは証拠になりません。両者が接触している現場をおさえでもしない限り、向こうは簡単に言い逃れられます。むしろここで動けば、逆にこちらが野蛮な国だと非難されますよ?」


「うっ……そ、それは……」


「彼のいう通りだ。下手に動いて失敗すれば、我々が世界の敵になってしまうかもしれない」


「……わかりました」

 

 ようやく納得してもらえたようだ。

 陛下が俺のほうを見て、一瞬小さく微笑んでみせた。

 お礼を言っていたのだろうか。


「だが、みなの意見も尤もだ。ゆえに準備は進めておこうと思う。近々同盟国と会談を行い、本件に関する対策を練ることにしよう」

 

 そうして、この日の会議は終わった。

 結局なにが決まったわけでもなく、ただ情報を共有しただけだった。

 具体的な対策は、また今後の会議で決められるらしい。

 会議終了後、俺とユノアはまっすぐ家に帰ることにした。


「すごいことになったね」


「そうだな。でもまぁ、あの国ならありえると思ったよ」


「うん、ボクも同じだよ。ねぇクロト、もし王国が攻めてきたら……」


「そのときは、俺たちでこの国を守ろう。たとえ正体がバレても」


「……そうだね」


「あと、そうなる前に生徒たちには、もっと強くなってもらわなきゃな」


「えっ、待って。まさかあの子たちに――」


「違う違う。戦わせるためじゃなくて、自分の身を守るためだよ」


 考えうる最悪の想定は、リベレーターと王国が同時に攻めてくることだろう。

 もしそうなったら、俺とユノアも本気で戦わなければならない。

 数で圧倒されている分、本気でなきゃさすがに勝てないだろうしな。

 その時はきっと、他に気を配る余裕なんてなくなると思う。

 だからせめて、自分の身は自分で守れるようになってほしい。


「なんだそういうこと……。驚かさないでよ」


「お前が早とちりなんだよ。さて、また忙しくなりそうだな」


「そうだね。ボクたちも頑張らないと」


 そんな話をしていると、気付けば家の前についていた。

 

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