41.囚われたAクラス

 俺がリベレーターの襲撃を受けた頃、同じく魔術学校でも異常事態が発生していた。

 校舎の壁を破壊し、黒い外套の男たちが乱入。

 その日に出席していた生徒、および教員を魔道具で拘束し人質にとっていた。


「みんな怪我はない?」


「大丈夫です……だけど先生……」


「うん。わかってる」


 しまった……警戒が甘かったな。

 まさかこんなにあっさり占拠されちゃうなんて……。


 ボクや生徒たちの手首には、特殊な手錠がはめられている。

 どうやらこの手錠、装着者の魔力を散らす魔道具らしい。

 その影響でうまく魔力をコントロールできない。


 三十二、三十三、三十四……侵入してきたのは全部で三十四人。

 この手錠の所為で魔力が散らされてしまうけど、精霊の力までは封じられていないみたいだ。

 だけど、さすがにいつも通りとはいかないね。

 出来るのは精々感知と防御壁を張るくらい。

 とてもじゃないけど戦える状態じゃない。


 襲撃を受けた直後であれば、精霊王の力を解放して侵入者を逆に拘束できたかもしれない。

 しかしその時点で、すでに何名かは人質に取られていた。

 それを感知したボクは、うかつに動くことが出来なかった。


「でも、捕まっちゃうなんて情けないな」


 ボクは自分にしか聞こえない音量でそう呟いた。

 生徒たちを任された身として、申し訳ない気分でいっぱいになった。だから、この状況からの打開策を考えていた。

 その時だった。

 Aクラスの教室に、新たに男が入ってきた。


「どうだ?」


「あと二十分もあれば完成できるぞ」


「そうか」


 教室へ最初に入った男に、今来た男が報告した。

 どうやらあの男がリーダー格のようだ。

 よく見ると、右肩に黄金の装飾が施されている。

 彼らの会話からして、なにかを作っているらしい。


「完成って、なにを作っているんだ?」


「あ? なんだてめぇは」


「ボクはユノア、彼らの副担任だ」


「副担任ねぇ~ なんでてめぇに教えないといけねぇんだ?」


 リーダー格の男は睨みながらボクに顔を近づけてきた。

 ボクは眼をそらすことなく見続けた。

 すると男は――


「まぁいいぜ、おしえてやるよ。俺たちが作ってるのは、校舎全域を覆う転移術式だ」


「転移術式……まさか! この校舎ごとボクらを攫う気なのか!」


「ピンポーン!」


 男はいやみったらしい表情で答えた。

 その言葉に生徒たちはおびえ始めてしまった。


「そ、そんな……」


「パパ……ママァ……」


 弱気な声が聞こえてくる。

 

 これはまずい状況だ。

 どうやらボク一人じゃ解決できそうにないな。

 仕方が無い、クロトに連絡をとろう。

 

 ボクとクロトは、互いにテレパシーを送受信できる魔道具を身につけている。

 形は指輪で、ボクは左手の小指に、彼は右手の中指につけている。

 魔力を散らされる所為で魔術は使えないけど、魔道具に魔力を流すくらいならギリギリできる。

 ボクは意識を集中して、魔道具起動と同時に呼びかけた。


 クロト――

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