40.行きはよいよい

 教会の外でじっと待つこと約四時間後、閉ざされていた扉が開けられた。

 そこから陛下が出てきたのを確認して、会合が無事に終了したことを悟った。

 そして同じ馬車に乗り込み、急ぎ足で帰路へついた。


「会合ではなにを話されてたんです?」


「なに、特別なことは話していないよ。ほとんどただの経過報告だった」


「へぇ~ 毎年そんな感じなんですか?」


「うむ。各国の現状を把握しあい、助け合えるところを探そう。というのが会合の目的だからな。あーそうだ、いつもと違う話も出たぞ」


「リベレーターについてですか?」


「さすが察しが良い。その通り、彼らの動向について情報共有をした。どうやら、私は彼らの一番の標的になっているらしい」


 そう言った陛下は苦笑いをしていて、少し呆れているように見えた。


「あまり驚いてないですね」


「国の性質上、仲良く出来ないとは思っていたからな。さして驚くようなことではない」


「まぁそうですよね」


 人間主義をかかげる集団に対して、他種族共存国家の王など一番忌むべき対象だろう。

 そりゃあ狙われて当然だよな。

 陛下もわかってたから、俺に護衛を頼んだわけだし。

 行きは何事もなく済んだけど、帰りは大丈夫かな。


「ん?」


「クロト殿?」


「さっそくですか」


「どうしたのだ?」


「敵襲ですよ。陛下」


 街道を走る馬車に、左右から複数の影が接近してきた。

 街道は森を切り開いて造られており、左右は木々が生い茂っている。

 魔術師による攻撃が、そこから突如として放たれた。

 青白いエネルギーの光線が三本、俺と陛下の乗る馬車に向かってきた。

 その攻撃を、俺があらかじめ馬車に施しておいた結界が防ぎ、他の者たちが襲撃に気づいた。


「馬車を止めろ!!」


 誰かの声が大きく響いた。

 すべての馬車が停止し、護衛の魔術師が左右に展開する。

 俺はいまだ馬車の中で、陛下を守りながら外の様子を観察していた。


 接近してきたのは人影が三十……異形の影が二十七。

 人影の方は魔術師で間違いないけど、そうじゃない方は……。


「魔物もいるぞ! みな気をつけるんだ!」


 また誰かの大声が響いてきた。

 なるほど、異形の影は魔物だったか。


「魔物まで使役してるとはな」


 魔物を制御する方法は、使い魔として使役する以外にない。

 つまり彼らと共に現れた魔物たちは、使い魔召喚によって契約した魔物だろう。

 もしそれ以外で魔物を使役できる魔術師がいるのなら、そいつは世界初の存在だ。

 そして思考するまでも無く、彼らはリベレーターだ。

 狙いは陛下で間違いないだろう。

 まぁしかし、この程度ならわざわざ俺が出るまでもなさそうだ。

 このまま陛下を守ることにしよう。


 その頃、同じく襲撃を受けた魔術学校では――


「そこから動くなよ。下手な真似させしなければ、命まではとらない」


 ユノアを含むAクラスの生徒達が、手首を魔道具の手錠で拘束され捕らえられてしまっていた。

 

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