39.強襲

 ボクとクロトが楽しく過ごした休日。

 ボクたちは二人とも、見られていることに気づけなかった。

 レノアに言われて初めて、あの日の視線に気づかされた。気づくことができた。

 だけどもう一つ、ボクたちがまだ気づいていないことがある。

 あの日、ボク達に向けられていた視線は一つじゃなかった。一種類じゃなかったんだ。

 それを知るのは、昼休みから四時間後。

 本日最後の授業が終わる頃だった。


 キーンコーンカーンコーン。


「さて、今日の授業はこれでおしまい。帰りのホームルームを始めようか」


 ようやく終わった。

 一人で全部の授業を受け持つって大変なんだね。

 それ以外にも今日は疲れたよ。

 変な質問される前に、ホームルームが終わった早く帰ろう。


 ボクはそう考えていた。

 ホームルームが終われば帰宅する。

 しかし帰れなかった。

 ホームルームは終わらなかったのだ。


 夕方の教室に爆発音が轟いた。

 音と一緒に校舎が揺れたこともわかった。


「な、なに!?」


 レノアが慌てて窓へ近づき、外を見てさらに驚いた。

 校舎の壁から煙が上がっている。

 飛び散った瓦礫も見受けられた。

 他の生徒たちも確認して、若干の混乱がおきかけた。


「みんな落ち着いて!」


 その前にボクは声を上げた。

 混乱が起こってからでは収拾がつかない。

 ただしこの場合、もう遅かったようだ。


「全員動くな!」


 急に扉が開いた。

 開けた途端に数人の男が乱入してきた。

 黒い外套に身を包み、荒っぽい口調で命令した。


「あなたたちは一体……」


「動くなと言ったぞ。この学校はすでに、俺たち【リベレーター】が占拠した」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「リベレーター? それが例の組織の名前なんですか?」


「そうだ。もともとは組織の名前ではなく、人間主義を掲げる者をそう呼んでいた。それが一つの組織となって、組織名に変化したようだ」


「どういう意味なんですかね」


「意味は確か、解放者だったはずだ」


 馬車の中、俺は陛下と話していた。

 現時刻は出発から一時間後、到着までは残り二時間といったところだ。


 それにしても解放者か。

 まるで自分たちが被害者だといっているような名前だな。

 

 そんな話をしながら目的地に到着した。

 セルティア共和国という、王ではなく司祭が治める変わった国だ。

 この国にある一番大きな協会で、毎年会合が開かれている。

 出席者は近隣諸国の代表たち。


「では行ってくる」


「はい。お気をつけて」


 協会に入れるのは、会合に登録されている人物だけらしい。

 陛下と護衛の魔術師団員を見送って、俺は外でお留守番だ。

 中では一体どんな話がされているんだろうか。


「……気になる」


 いっそ覗いてしまおうか。

 いやいや、もしバレたら大変なことになるよな。

 止めておこう。


「学校の方は大丈夫かな」


 俺は空を見上げながら思った。

 中で話されている内容と同じくらい、ユノアたちの様子が気になる。

 今日はほとんどの先生が不在だし、一年でもっとも警備が薄くなる日だ。

 彼女がいるしよっぽど大丈夫だとは思うけど……。


「まぁ、なにかあれば連絡があるだろ」


 やることのない俺は、そうやって暢気に考えていた。

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