33.ラミリス=オルソン

 アイーシャとの面談は時間ぴったりに終わった。

 俺の調整が正確だったわけではなく、彼女が時間を気にしてくれていたからだ。

 俺はこの時、自分にも彼女のような姉がいればよかったと感じた。


 そして、彼女と入れ替わる形で部屋に来たのが、エルフの少女ラミリスだ。

 ここで告白しておくと、俺はあまりエルフについて理解が無い。

 快く思っていないという意味ではなく、文字通りよく知らないのだ。

 ずっと旅をし続けてきたにも関わらず、エルフとは接点が少なかった。

 それには理由がある。


「ワタシの夢は、エルフ族の復興です」


 夢はなんだという質問に、彼女は真剣な顔で答えた。

 この発言で大体察しはつくだろう。

 世界にいるエルフ族は、ここにいる彼女を含めて二桁しかいない。

 戦争や略奪によって、彼女達は住処を奪われ、果てに命も奪われ続けた。

 気づけば数万人いた同胞も、数十人だけになってしまったのだ。


「復興というと、具体的にはどうするつもりだ?」


「国を造りたいと考えています」


「はい。エルフ族の国です」


 自分たちの国を造る。

 この言葉の意味を、彼女は理解しているのだろうか。


「ラミリス、君はどうやって国を造るつもりなんだ?」


「それは、土地を広げて人口を増やして……」


「足りないよそれじゃ。全然足りてない。君は国というものをまったく理解していない」


 俺は少し厳しいことを言った。

 その自覚はあるが、あえて言わなくてはならない。

 彼女が本気で国を造りたいのなら、間違いを正しておかなくてはならないからだ。


「国旗を造り、名前を考えれば国が完成するわけじゃない。いくら土地を広げても、住む人数が増えても駄目だ。それだけじゃ、ただ大きいだけの街止まりだ。国として地図に刻まれるには、全然足りてないよ」


「で、ではどうすれば……どうすれば国は出来るんですか?」


「世界中に、国だと認識させれば国なんだよ」


「にん……しき?」


「ただ名乗るだけで国は出来ない。他者に、他国に認められなくれば国とは呼べない」


 建国にさいし、三国以上の同意と支持を必要とする。

 それがこの世界において、新たに国を造る条件だ。

 細かく言えばもっとあるが、最低条件は三国以上に認められること。

 それをクリアしなければ、国を造ることは出来ない。


「他国に求められるというのは、信用を勝ち取るということ。これはとても難しいことだ。たとえ長寿のエルフでも、どれだけ時間がかかるかわからない。ラミリス、お前にはこれをやり遂げる覚悟はあるのか? どれだけ時間がかかっても、たった一人でも」


「……」


 彼女は黙り込んでしまった。

 少しどころか、かなり厳しいことを言ってしまったな。

 だけどこれは仕方が無い。

 この問いにイエスと答える覚悟はなければ、建国など到底不可能だからだ。


 はてさて、彼女に覚悟はあるのかな?


「……やります。やってみせます! それがワタシの、ワタシ達の夢ですから」


「……そうか。だったらまず、国についてみっちり勉強だな」


「はい!」


 どうやら、その程度の覚悟は決まっていたらしい。

 だから今は、ちゃんと導いてあげよう。

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