31.ネロ=オスカル

 個人面談三日目。

 最初の相手は獣人のネロだ。

 普段からニコニコしている彼女だが、今日は使い魔達とめいっぱい遊んでさらにご満悦の様子。


「今日は楽しかったか?」


「うん! とーっても楽しかった! ありがとね先生」


「俺はなにもしてないよ。ただ遊べって言っただけだし」


「先生がその時間を作ってくれたから、あたし達は楽しめたんだよ。だから先生のお陰なの」


「そうか。なら、そういうことにしておくよ」


「えっへへ~ 先生照れてるね」


 無邪気で明るいという女の子。

 それがここ数日で感じた、ネロ=オスカルという少女の印象だ。

 彼女はいつも楽しそうで、誰とでも明るく接している。

 他の生徒たちにも好印象をもたれているようだ。


「ネロは将来、何になりたい?」


「冒険家!」


 そんな彼女の夢は冒険家らしい。

 冒険家とはその名の通り、世界各地を渡り歩き、数多の冒険をする者のことだ。

 なぜ冒険家になりたいのかを尋ねると、彼女はとびっきり楽しそうに笑ってこう答えた。


「見てみたいの! あたしの知らない物ぜーんぶ! 綺麗な景色も、不思議な光景も、誰も知らない場所も。全部ぜーんぶ見てみたいんだ!」


 好奇心と探究心。

 それこそ、彼女が冒険家を目指す理由だった。

 知らないことを知りたい。行ったことのない場所に行ってみたい。見たことのない光景を見てみたい。

 そういう欲求が、彼女を冒険へと駆り立てている。


「じゃあどうして魔術を習おうと?」


「冒険って危険がいっぱいでしょ? だから魔術学校に入ったんだ! 自分の身は自分で守れるようにしなくちゃ、冒険家にはなれないと思って」


「そういう理由か。なるほど正解だよ。確かに冒険をするなら、魔術を使いこなせるようになってた方が効率的だな」


「あたしもそう思ったの。魔術って便利だもんね」


「そうだな。魔術は便利だ」


 魔術は戦うための力だ。

 多くの人間がそう誤認している。

 魔術は強力な力で、魔物を討伐したり、戦争に用いたりもできる。

 だからこそ誤認してしまう。

 しかしこれは、魔術師として一番してはならない理解の仕方でもあった。

 魔術を戦いの道具だと認識すること。それは魔術の可能性を狭める行為に他ならない。


「お前は大丈夫そうだな」


「えっ、なんのこと?」


「なんでもないよ」


 魔術は便利な力だ。

 使い方次第で、様々な形に変化する。

 生活を豊かにしたり、仕事に応用できたり、もちろん自分を守る手段にもなる。

 魔術はなんだって可能にする。だからこそ間違ってはいけない。

 それを理解することが、優れた魔術師の必須条件なのだ。


「まぁ冒険家になるなら、もっと体力をつけなきゃな」


「うっ……痛いところつくな~ 先生は」


「はっはははは、先生だからな」


 彼女はきっと良い魔術師になる。

 俺はこのときそう感じた。

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