28.ミズキ=イザヨイ

 続いて面談室へやってきたのは、イズキの幼馴染ミズキだ。

 見た目は普通の人間である彼女は、鬼と人間のハーフという個性を持っている。

 最初に説明しておくと、現代社会に置いて亜人と人間のハーフは、あまり快く思われていない。


「ミズキって中等部からこの学校にいるんだよね?」


「はい、そうです」


「ん~ あんまり聞きたくないし、答え難かった無理に答えなくていいんだけど」


「なんでしょう?」


「その……周囲の反応はどうだった? 嫌な思いとかしなかったか?」


 ミズキはピクリと反応したように見えた。

 それから僅かに沈黙して、目を伏せてからこう答えた。


「居心地は良くなかったです。幼稚な嫌がらせをされたり、陰口を言われたりしてましたから」


「そ、そうか……ごめんな嫌なこと聞いて」


「いえ大丈夫です。少なくともそれは最初だけでしたから」


「そうなの?」


「はい。あっそういえば私の前ってイズキでしたよね? あいつまた馬鹿なこと言ったりしてませんでしたか?」


「最強の男になりたい!とは言ってたかな」


「やっぱり……変わってないんだから」


 そう言った彼女の口元が緩んでいる。

 表情もどこか嬉しそうで、普段言い合いをしている姿から想像できない反応を見せた。


「あいつ昔っからああなんですよ。考えは幼稚だし、妙に抜けてるし、声は大きいし……」


 口にしているのは文句に聞える。

 目を閉じて聞いていれば、罵倒していると思うだろう。

 ただ彼女の表情を見ていると、楽しそうに話すあの表情を見ていると、なぜか自慢しているように聞えた。


「ひょっとして、ミズキへの周囲の対応が変わったのって、イズキが何かしたから?」


「――! なんでわかったんですか?」


「いや、なんとなく」


 その表情を見ていたら、そうじゃないかと思っただけだ。

 まさか本当だったとは……。

 詳しく聞いてみると、彼女を苛めていた一部の生徒を、イズキはボコボコにしてしまった事件があったようだ。

 それ以来彼女を苛めたり、影口をたたく者はいなくなった。

 この話をしている間、彼女は誇らしげだった。


「あいつは馬鹿で乱暴でデリカシーのない奴ですけど、私を助けてくれました。あの時は本当に嬉しかった。こんなの本人には恥ずかしくて言えないですけどね」


「なんというか……意外だな。普段は喧嘩ばっかりしてるイメージだったから」


「それで間違ってませんよ。昔から喧嘩ばっかりでしたから」


「だったら尚さら今の話してみたらどうだ? 喧嘩もなくなるだろ」


「無理ですよ今更」


 喧嘩ばかりしていた所為で、普通に仲良くするということが出来なくなってしまったらしい。

 結局この後もイズキとの昔話を聞き続けて、面談というより談笑になってしまった。

 ただ一つだけハッキリしたことがある。


 ああ、この表情――完璧に惚れてるな。


 生徒間の恋愛事情を垣間見た瞬間だった。

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