26.ゴルド=ロックウェル

 個別面談二日目。

 この日最初の面談相手は、ドワーフのゴルドだった。

 授業で全力疾走してきた影響で、肩は下がりぐったりした様子がみてとれる。


「始めていいか?」


「だ、大丈夫だ!」


「じゃあ質問するぞ。ゴルド、君は将来どうなりたい? なにになりたい?」


「オイラは自分の店を開ききたんだ!」


「店? なんの?」


「道具屋! オイラ物を造ったりするのが好きなんだ! だからいろんな物を作って、それをみんなに使ってもらいたい」


 確か彼の得意魔術も錬成系の魔術だったな。

 錬成魔術はその名の通り、物質を生み出す魔術、錬金術とも呼ばれている。

 無から有を生み出すことは出来ず、錬成には必ず材料が必要になる。

 魔力のみを材料にした場合、魔力が尽きれば生み出したものも消滅する。ただし物的な材料を用いた場合、魔術の効果が切れても残るんだ。


「確かに錬成魔術は最適だな」


「ん? オイラ別に、錬成魔術で作りたいわけじゃないぞ」


「そうなのか?」


 ゴルドはこくりと頷いて、楽しそうな笑顔になって話を続けた。


「どっちかといえば、魔術で作るより自分の手で作るほうが好きなんだ! 時間かかって大変だけど、出来た時気持ち良いから!」


「そういうもんか」


「それに新しい物は魔術じゃ作れないし」


「新しい物か。確かに商品開発には向かないな。ゴルドはそっちにも興味があるのか」


「もちろんだ! 自分の作った物が世に残るって、すっごい格好良いと思うからな!」


「意外だなぁ。てっきり皆の喜ぶ顔が見たいからとかって言うと思ってた」


 大抵の理由なんて、そういう綺麗事みたいなものだろう。

 しかし彼は、動機に他人ではなく自身の満足を選んでいた。


「そりゃあ皆が喜んでくれれば嬉しいと思うけど。やっぱりオイラは、使って喜んでる顔を見るより、皆が手にもってくれてるのを見る方が嬉しいぞ。なんか認めてくれたって思えるからな!」


 この時の彼は笑顔だった。

 ただ最初に見せたような笑顔ではなくて、どこか寂しそうな感じがした。

 認めてくれたって思える……その言葉にはきっと、なにか理由があるのだろう。

 普段から明るく元気で、一見悩みも少なそうな彼だが、心の奥にはなにかがひっかかっている。

 そう感じられる瞬間だった。


「そっか。俺も応援するよ」


 理由は気になった。

 ここで聞いてしまうのは簡単だ。だけど俺はそうしなかった。

 これは半分意地なのだが、彼から相談してきて欲しいと思ったからだ。

 きっと今聞いてしまっても、対して役には立てない。

 俺は彼のことをまだ知らない。

 彼も俺のことを知らない。

 互いに理解を深めた時、初めて相談という手段を選ぶ。


「なにかあればいってくれ。いつでも相談に乗るからな」


「はい!」


 今の俺に言えるのは、これくらいが限界だ。

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