25.ランニングをしよう

 先日行われた屋外授業。

 そこで露呈した生徒達の体力不足を改善するため、今日も屋外で授業が行われることになった。

 十二人の生徒達は言われた通り、動きやすい格好に身を包んでいる。


「せんせー! 今日はなにをするんですか?」


 レノアがハキハキトした口調で質問してきた。

 俺は両腕を組んでかっこつけながら、もったいぶって答えた。


「今日はランニングをしよう!」


「ランニングってことは走るんですか?」


「そう走るんです! みんなこの前の鬼ごっこは覚えてるよな?」


 ウンと頷く生徒達。


「走ってるだけなのに、結構疲れただろ?」


 ウンウンと二回頷く生徒達。


「序盤で息切れしてるやつもいたし、後半なんて動きがガタガタだったな」


 俺と生徒達は鬼ごっこの光景を思い返した。

 常に走り続ける俺とユノアに対して、生徒達は全速力を出しては疲れ休憩しを繰り返していた。

 以前にも言ったことだが、常時全力疾走をすることは困難だ。

 疲労が溜まれば呼吸が乱れ、筋肉は鉛のように重くなっていく。

 魔術である程度抑制できるとしても、生身である以上限界はある。


「すごい魔術が使えます。だけど疲れて動けません――じゃ話にならないからな」


「でも先生、走るだけってつまらないと思うんですけど」


 そう言ったのもレノアだった。

 この意見を予想していた俺は、ニヤリと笑ってある提案をした。


「だったらこういうのはどうだ?」


 俺は自分の影に右手をかざした。

 そうすると影の一部がぐぼっと盛り上がり、大型犬くらいの大きさの黒いオオカミが出現した。


「みんなでこいつを追いかけてくれ。捕まえられたらランニング終了にする」


 俺が呼び出したのはシャドゥウルフと呼ばれる魔物だ。

 影に潜む能力があり、夜間は無類の機動力を発揮する。


「それって魔物……ですよね?」


 アイーシャがおびえながら質問した。


「そうだけど大丈夫。こいつも俺の使い魔だから」


「グリフォンだけじゃねぇのかよ」


 ミズキが半分呆れて半分驚きながらそう口にした。


「授業時間内に捕まえられたら、なにかプレゼントでも用意するよ」


「ホント!? やった頑張るぞ!!」


 飛び跳ねて喜ぶネロ。

 どうやら、まだ彼女は気付いていないようだ。


「それじゃさっそく始めるぞ」


 そしてユーリがあることに気付く。


「あの先生、もし捕まえられなかったらどうするんですか?」


「捕まえるまで続けるよ」


「えっ……」


 一瞬場が凍りついた。

 いやいや冗談だろ……という声がチラッと聞えた。

 俺はニッコリと笑って彼らにこう伝えた。


「それが嫌なら走ればいい――死ぬ気でね?」


 結果は授業時間だけでは終われず、最終的に日が沈むまで走り続けた生徒達だった。

 

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