22.ミシェル=ターナー

 個別面談はその後も続いていく。

 レノアの次はミシェルの番だ。


「よ、よろしくお願いします」


 緊張しているのか、徐々に小さくなっていく音量。

 思えば彼女とこうしてしっかり話すのは初めてだった。


「えーっと、ミシェルは将来なりたい職業とかある?」


「ご、ごめんなさい。まだ全然決まってないです……」


「謝らなくていいぞ。だったら具体的じゃなくてもいいから、こうなりたいとかっていうのは?」


「え、えっと……人の役にたつ仕事にはつきたいなと」


「へぇ~ 良いじゃないか」


 ちょっと意外だった。


「で、でも私……人と話すのが苦手で。相手の目を見るのが恐いんです」

 

 それはなんとなく気付いていた。

 こうやって話している最中も、ずっと目を逸らしているのだから。

 極度の人見知りというやつか。


「こ、これじゃ仕事も出来ないですよね……」


「まぁ今のままだとな」


「……」


「だけどそんなに心配は要らないと思うぞ?」


「そう……なんですか」


「うん。俺も昔は、他人が恐いと思ってたんだよ」


「えっ、先生が? そうは見えませんけど……」


「だろうな。でも本当なんだよ。相手がなに考えてるかわかんなくてさ。関わるのが怖くて避けてたんだ。だから最初の頃は、ずっと一人で旅してたよ」


 ミシェルは意外そうな顔でじっと聞いていた。

 これは本当の話で、ユノアと出会う前の俺は、今よりずっと閉じた性格だった。というより臆病だったんだ。

 他人と関わって傷つくのが恐かった。

 信じたのに裏切られるかもしれないと疑った。


「だけど初めて、信頼できる人っていうのに出会えた」


 ユノアのことだ。


「その時わかったんだ。信頼されないのが恐いなら、相手に信頼される自分になればいいんだって。そういう努力をすれば良いんだって。結局さ、自分から歩み寄らなきゃ始らないんだよ。最初は恐いと思うけど、切っ掛けさえ出来ればちゃんと向き合えるようになる」


「そういうものなんですか」


「そういうものなんだよ。とりあえず、クラスの皆と友達になれ。全員とは言わないから、せめて歩み寄ってくれる奴には真剣に向き合うんだ。まずはそこから始めてみろ。困ったら俺が手伝ってやるから」


「……はい。が、頑張ってみます」


「おう! その意気だ」


 ミシェルはレノアに次ぐ実力を持った魔術師だ。

 将来有望な才能を秘めている。

 だからこそ、他人と関われるようになった方が良い。

 幸いにも他人の役にたちたいという優しい心を持っているようだし。

 クラスの皆は優しいから、きっと大丈夫だろう。

 願わくば、心から信頼できる仲間が出来ますように――


 俺にとってのユノアのような存在が、現れますように。

 

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