14.使い魔召喚

 入学式から一週間経った今日。

 すっかり授業にも慣れ、生徒達とも徐々に打ち解けてきた。

 まぁ打ち解けたといっても、普通に会話をするようになった程度だけど。

 それでも十分な進展だ。

 つい最近まで、まったくの他人同士だったわけだしな。


「今日は使い魔召喚をするぞ!」


 使い魔とは、魔術師が使役する生物のことだ。

 名前に魔と入っているが、これは魔物という意味ではなく、魔術師という意味である。

 対象は生物であればなんでも良い。動物に限らず、魔物や人間でも使い魔の対象となる。

 魔術師にとって使い魔は、自身を支える存在であり、信頼できるパートーナーだ。

 戦いにおいて、使い魔の有無が勝敗を分けることもある。


「あ、あのクロ先生」


「なんだレノア」


「使い魔召喚って確か、術式はすごく複雑で、限られた人じゃないとできないと思うんですけど」


「あーそうだな。でも大丈夫、もう必要なものは準備してあるから。みんな校庭に出てくれるか」


 俺は先に教室を出た。


「異常なことをさらっと口にしていきましたね……」


「全くだ。少し慣れてきた自分が恐い」


 俺が去った後の教室では、トールとローランが呆れて肩をおとしていた。

 そして全員が校庭に出ると、大きな召喚陣が地面に刻まれていた。

 両サイドには俺とユノアが立っている。


「これが召喚陣……」


「オイラ初めてみたぞぉ」


「私もだ。エルフの里で資料としては見たことがあるが……」


 生徒達はまじまじと召喚陣を眺めている。

 そこまで珍しいものだったのか。


「あっそうだ。ちなみにもう使い魔がいる人っていたりする?」


 生徒達は全員首を横に振った。


「なら丁度良かった。あーそれとな。これやるのAクラスだけだから、あんまり他のクラスの生徒には話すなよ」


 使い魔召喚なんて、本当は授業内容に含まれてなかった。

 知識として教える授業はあったけど、召喚まではしない予定だった。というかそもそも普通は出来ない。

 この時間も、俺が校長と陛下に直接お願いして実現しただけだ。

 Aクラスだけなのは、あんまり増えすぎると収集がつかなくなるから。


「そろそろ始めるけど、その前に質問とかってある?」


「はい!」


 ネロが手を挙げた。


「先生達も使い魔がいるの?」


「ああ、もちろん」


「どんな使い魔か見てみたい!」


 彼女がそう言うと、他の生徒達からも同じ声が上がった。


「別にいいぞ」


「やったぁー!!」


 見られて減るものじゃないしな。

 あーでも、どいつを紹介するかは選ばないとな。


「よし――ちょっと待ってな」


 あいつなら良いだろ。

 俺は生徒達から少し離れた場所に移動した。

 そこで指笛を空に向かって高らかに吹く。


「ピィー」


 空から鳥の鳴き声が聞えてきた。

 翼を広げた黒い影が、こちらに向かって直進してくる。

 鳴き声は鷹によく似ていた。

 しかし明らかに鷹よりも大きい。

 日の光をバックに影に染まる身体には、四本の足が生えていた。


「こ、これって――」


「紹介するよ。こいつが俺の使い魔グリフだ」


「グリフォン!?」


「そんなに驚く?」


 一応無難だと思って呼んだんだけど……。

 もしかしてドラゴンの方が良かったかな。


「じゃ、じゃあユノア先生は?」


「ボクはこの子だよ」


 彼女は自分の胸元からペンダントを取り出した。

 そこには大きな赤い宝石がはめ込まれていて、生徒達に見せた途端、強く光りだした。


「カーバンクル!?」


「そうだよ。名前はフィー」


 空色の毛並みに赤い宝石を頭につけた獣。

 幸運を司ると呼ばれている。

 もし彼女がもっと早くにフィーと出会っていたなら、国を乗っ取られることはなかっただろう。


 俺達が呼び出したのは、どちらの普通の生き物ではない。

 幻獣と呼ばれる存在で、この世ならざる獣。

 生徒達が驚くのも仕方が無いのだが……。


 こんなに驚かれるとは思わなかったな。

 

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