12.精霊魔術

 俺の授業が終わった次は、ユノアの授業が始まる。

 彼女はチャイムが鳴る前には教室にいて、チャイムと同時に授業を始めた。


「今からはボクの授業だ。誰かに教えるなんて初めてだけど、有意義な時間になるように頑張るよ」


 みんなの表情が良い。

 この感じだと、クロトの方は成功したみたいだね。

 ボクも頑張らなくっちゃね。


 ユノアは生徒達の表情を見て気合を入れ直した。


「ボクが教えるのは精霊についてだよ」


 彼女は黒板に口で言ったことを書きながら進めた。


「精霊とは何か。これを説明できる人はいるかな」


「はい!」


 手を挙げたのはユーリだった。

 彼女は学年唯一の精霊使いである。


「ユーリさん」


「精霊とは、大自然から生まれた意志を持つ魔力の集合体です」


「正解! さすが精霊使いだね。他のみんなは知ってたかな?」


 首を横にふっている人もいれば、うんうんと頷いている人もいる。

 どうやら精霊についての理解はそれぞれ異なるようだ。


「なるほど。まぁ精霊に関する知識は、精霊使い以外には直接必要ないから仕方がないかな。だけど知っておいて損はないから、この機会に憶えておいてね」


 世界にいる精霊使いは七十八名。

 数では少ないが、出会う確率が低いだけでゼロじゃない。

 現にこの教室には、その限られたうちの二人がいるわけで。


「ユーリさんが言ってくれた通り、精霊は意志を持った魔力の集合体。ようするに力そのものなんだ。じゃあ精霊ってどこにいると思う? ユーリさんは答えられると思うし、他の人でわかるかな」


 今度は誰も手を挙げなかった。

 知らない知識で自信がないようだ。


「イズキ君はどこにいると思う?」


「えっ、オレ?」


 ユノアは笑顔でこくりと頷いた。


「えっと……大自然から生まれるんだし……その辺にいるんじゃないですか?」


「適当すぎ」


「んだとミズキ!」


「正解」


「「えぇ!!」」


 イズキとミズキ、二人の驚きがシンクロした。


「精霊はね? どこにでもいるし、どこにもいないんだ」


「え……ど、どういう意味だ」


「精霊は世界のあらゆる場所に存在している。例えばこの教室にもいるし、君達の前にだっているよ。だけど普通は見えない。それはね? ボク達のいる次元と、精霊のいる次元が違うからだ」


 精霊界――精霊が存在する場所をそう呼ぶ。

 ボク達がいる側を現世と呼ぶなら、精霊界は現世に重なって存在しているんだ。

 

「精霊とボク達は同じ空間内にいる。だけど立っている次元が違うから、見たり干渉することができない。例えるなら、コインの表裏と同じだね。ボク達が表の存在なら、精霊は裏側の存在。同じコイン上にはいるけど、裏側は見えないでしょ?」


 しかし、それを可能にするのが精霊使いだ。

 精霊使いは、【精霊眼】と呼ばれる特別な眼をもっていて、精霊界を覗くことが出来る。

 そして、精霊を見て認識できれば干渉も可能になるんだ。


「ボク達精霊使いは、精霊を見る眼を持っている。そして精霊は、大自然の細かい変化にも敏感に反応するんだ。だからボク達は、そういう変化を見ていろんなものを感知できる。味方に精霊使いがいれば、不意打ちとか罠に困ることは無いんだよ?」


 教室からへぇーという声があがった。

 みんな自分の知らない知識に触れて、興味津々に聞き入っている。

 どうやらユノアの講義も、好印象に終わったようだ。

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