10.先生になるまで

 日が沈み月が顔を出す。

 時刻は午後九時を回っていた。

 街の明かりが徐々に消えていき、王城でも部屋の明かりが消えていく。

 そんな中、新たに明かりが灯った部屋があった。


「二人ともすまないね。こんな時間に」


「いえ、陛下こそお疲れではないですか?」


「私は平気だよ。そちらこそ、初仕事でお疲れだろう」


 その一室では、俺とユノア、リガルド国王が会話をしていた。

 生徒達と顔を合わせた後、陛下から話がしたいと呼び出されてここにいる。

 部屋には俺達以外誰もいない。お忍びでの密会だ。


「して、生徒達はどうだったかね?」


「個性豊かで良かったですよ。なぁ、ユノア」


「うん。ボクも、とっても良い子達だったと思うよ」


「そうかそうか。そう言ってもらえると嬉しい。しかし、あなた達がこの国へやってきた時は、本当に驚いたよ。伝えられた通り、もう亡くなられたとばかり思っていたのでなぁ」


「……そうでしょうね」


 再会した俺達は、二人で安全に暮らせる地を探していた。

 そして二週間ほど前、この国にたどり着いた。

 陛下とは以前に、盗賊に襲われていたところを助けたことで面識があった。

 最初は酷く驚いていたが、事情を説明すると納得し、この国で暮らすことを快く受け入れてくれた。

 教師の仕事も、陛下から薦められて始めたことだ。


「陛下には本当に感謝しています」


「いやいや、私の方こそ色々世話になったからね。ただ……本当にこれでよかったのかい? 君達なら、もっと他にも道はあっただろう?」


 陛下の言う道とは、おそらくルグドニア王国に対する報復のことだろう。

 俺とユノアは互いに顔を見合い、小さく微笑んでから前を向きなおした。


「もちろんですよ陛下」


「しかしだな……」


「おっしゃっている意味はわかります。でも俺達は、もうゆっくり暮らしたいんです。穏やかな場所で、平和に生きていきたいんです」


「うん。ボクも彼と同じ想いです」


 英雄としての賞賛も、富も英知も必要ない。

 そんなものに振り回されるのは、もう懲り懲りだと感じていた。

 俺だけじゃなくて、ユノアも……。


「そうか……。ならばこれ以上、私から言うことは無い」


「ありがとうございます。まぁ俺達も、タダで住まわせてもらおうなんて思ってませんから。もしもの時は言ってください」


「この国を守るためなら、ボク達も力を貸します」


「はははっ、それはこちらのセリフだよ。アルステイン国王の名にかけて、この国での二人の権利は必ず守ろう」


 こうして俺達は、アルステイン王国で暮らすことになった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます