3.精霊使いユノ

 旅を始めて半年が過ぎた頃、世間では魔神と呼ばれる怪物が暴れまわっていた。

 たった数日でいくつもの国が滅んだりしたらしい。

 噂で聞いた話では、滅んだ国の中に俺が以前訪れた国もあったようだ。

 その国の人達は、他所からきた俺に親切にしてくれた。そんな彼らが殺されてしまったかもしれない。そう思うと怒りが湧いてきた。

 

 この出来事をきっかけに、当ての無い旅に目的ができた。

 魔神の行方を捜す旅だ。危険ではあるけど、このまま放っておけば、いずれ全ての国を滅ぼしかねない。

 そうなれば、せっかく始めたこの旅も、強制的に終わってしまう。

 

 それから半月後、一人の女性と出会った。

 彼女の名はユノ。濃い緑色の短髪に、小柄で少年のような顔立ちをしている。

 着ている服も男物で、一人称も「ボク」だったから、最初は俺も男性だと勘違いした。

 彼女自身、会ったばかりの頃は男性として振舞っていた。

 これには深い理由があった。


 実は彼女、とある国の元王女様だったのだ。

 十歳の頃に大規模なクーデターが起きて、当時の反国家勢力に国を乗っ取られてしまったらしい。

 父と母は殺され、なんとか生き残った彼女も、国を出ざるを得ない状況になった。

 その後、追っ手から逃げるため長かった髪を切り、当時綺麗なブロンドヘアだったのを今の色に染め替えた。

 それからたった一人で旅をしていた。

 境遇は違うけど、お互い一人になってしまった事実は同じで、その後紆余曲折を経て、一緒に旅をすることにした。


 彼女の本当の名前はユノアと言う。

 願わくば国を取り戻したいと思っているらしいが、一人ではどうすることも出来ず、ずっと当ての無い旅をしていたそうだ。

 彼女も魔神の噂は知っていて、いつか生まれ故郷も滅ぼされるかもしれない。そう心配していたらしく、俺と一緒に魔神を探すことになった。


 彼女は【精霊使い】だった。

 精霊使いとは、精霊と契約しその力を行使できる存在。とても貴重な存在で、世界中を探しても、精霊使いは数十名しかいない。

 その中でも彼女は特別で、なんと四大精霊すべてと契約を結んでいた。特に風の精霊に関しては、精霊王シルフと契約を結んでおり、大気すべてを支配することができる。


「国を出て五年くらい後だったかな? 森で魔物に襲われたとき、突然シルフが現れてボクを助けてくれたんだ」


 彼女はそう言っていた。

 自分に精霊使いとしての才能があったことも、その時に初めて知ったらしい。

 その後シルフと契約を結び、晴れて精霊王の契約者になった。その際に外見年齢は固定化され、不老の存在になったそうだ。

 ちなみに俺は外見は二十台前半だけど、実年齢は三十近い。

 半分が悪魔の俺にも、最初から寿命の概念が無い。外見は成人程度まで成長したあとに変化が止まる。その後は自由に外見を変化させることが可能になった。


 つまり、俺達は二人とも不老の存在だった。

 それを知った当初は、似た者同士だねと笑いあったことを憶えている。

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