2.全部嘘です

 地面から現れたのは、白紫色の珍しい髪をもつ若い男性だった。

 服は着ておらず真っ裸で、女性のような白い肌には傷一つ付いていないようだ。

 ここは罪人が眠る墓地。

 そして、大英雄は二人とも命をおとした。


 それは全部嘘である。


 なぜなら彼こそが、魔神を討伐した英雄の一人。

 大魔術師クロトなのだから。



「はぁ……ほんと災難だ……。まさかこんなことになるなんて」



 皆さんどうもこんにちは、いやこんばんはかな?

 もう随分日が落ちてしまってるようだ。

 それにしても臭いなここ……ゴミ捨て場以上に臭い所なんて初めてかもしれない。

 どうして俺がこんな場所に生き埋めにされていたのか。

 それを説明するには、俺の生い立ちから話す必要があるな。

 長い話になるけど、重要だからよく聞いてほしい。


 まず最初に言っておくけど、俺はただの人間じゃない。というかそもそも人間ですらない。

 遠い西の外れで、悪魔と人間の混血として生まれたのが俺だった。

 ついでに言うと、俺の前世は別世界に住む人間だ。

 こことは全く違う異世界に生まれて、普通の人生をおくって、普通に交通事故で死んだ。


 俺が赤子として目を醒ましたとき、すでに父親はいなかった。

 どうやら俺が生まれる前に、人間達によって殺されてしまったらしい。

 現代でもそうだが、悪魔に対する偏見は強かったようだ。

 母親は人間だったけど、悪魔と子をなしたということで異端認定され、生まれ育った国を追い出されてしまっていた。

 それから母の手一つで俺を育ててくれた。

 だけど俺が十歳になった時、急に体調を崩してそのままぽっくり逝ってしまった。


 幼くして一人になった俺は、どう生きていけば良いのかわからず途方にくれていた……。というわけでもなく、幸いにも前世の記憶が残っていたこともあって、慌てはしなかった。

 その後いろいろ考えた結果、この世界を旅することに決めた。せっかく生まれなおした異世界なんだ。この人里離れた山奥で暮らし続けるなんてもったいない。

 母が遺してくれたお金を握り締め、二人で暮らした山小屋から出た。


 旅の途中、たくさんの物を見て、多くの人々と関わりを持った。

 そこで一般常識を学び、さらに魔術の存在を知り、独学で知識を集めて勉強した。

 親が悪魔だった所為か、普通の人間よりも優れた魔術師としての才能があったらしく、旅を始めて三ヵ月後には、大抵の魔術はマスターできた。

 さらには【魔術王の眼】という特別なスキルまで発現していた。これについては、またいずれ使う機会があったら説明しよう。

 とにもかくにも、俺の旅は順調に進んでいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます