第67話 魔王級

 



 宇宙船を手に入れてから一ヶ月ほどが経過した。

 

 俺専用に造られたこの宇宙船の性能を色々と調べてみると、ジオが言っていたように戦闘用というよりは高速輸送船といった感じだった。武装が主砲1門しかないしな。

 

 通常の宇宙戦艦の4分の1の大きさではあるが、大型のアルミナスドライヴを積んでおり、どの宇宙戦艦よりも速い速度で航行できるらしい。そして前エルサリオン王の前で宇宙旅行をしたいとカレンと話したからか、居住性に重きを置いた造りになっていた。

 

 この宇宙戦艦の名前は『リーゼ』とカレンが名付けた。まあリーゼリットの愛称だ。

 

 このリーゼは全長60m、高さ25mの青い流線型の宇宙船で内部は3階層になっている。


 1階はすべて居住区で、2階は一部居住区でほかは格納庫やオートマタの整備施設になっている。3階には艦橋があり、船頭と船尾にEアーマーの発着口がある。エーテルシールドで覆われた甲板は、パワードスーツを着て戦闘練習をする屋外訓練場になっている。艦内の全ての区域は重力装置のおかげで、宇宙空間でも地上と変わらない生活ができるようになっている。

 

 居住区は5LDKで1階にリビングと大きなベッドルームが一つあり、キッチンと大きなお風呂も設置されている。2階には10帖ほどの4つの部屋があり、階段でリビングと行き来ができるようになっている。

 

 居住区の設備は全て最新型でフィロテスが大喜びしてたよ。大貴族の屋敷並みだって言ってた。俺たちからすれば、エルサリオンの庶民の家ですらオーバーテクノロジーなんだけどな。

 

 でも実際使ってみたらかなり良くてさ、地上の家電も設置できるようにしてくれたらしいからこの際この宇宙船を家にしようということになった。

 

 んで、地上に着陸させて公安の人たちを呼んでこれに住むからって言ったら、数分ほど口をあんぐり開けてフリーズしてた。まあ日本人が宇宙船を所有して、そこに住むなんて言えばそういう反応になるよな。


 俺はそんな彼らを見て見ぬ振りをして、地上にいる時は光学迷彩みたいなので姿を隠すから迷惑をかけないと言っておいたよ。

 

 そしてその日から、俺たちは地上400kmの地球の軌道上で生活している。国際宇宙ステーションがいる高度といえばわかりやすいかな? これ以上高度を上げると、月に定期的に襲来するダグルを俺とカレンのエーテルで地球人に引き寄せちゃうからな。

 

 当然ずっと宇宙にいるわけではなく、たまに横須賀にある、今は無人の米軍基地に降りて買い物をしにいってるよ。んで、パワードスーツの飛行練習がてら、国際宇宙ステーションの人たちに差し入れしてあげたりしてる。最初は宇宙空間に鎧を着た俺たちが現れてエライびっくりしていたけど、俺のことを知っていたのか米国人以外はホッとしてた。米国人だけ殺さないでとか命乞いしてたけど。

 

 ああ、言葉はアガルタ製のインターフェースを耳に付けているから問題ない。全ての言語が理解できるし、俺が話す言葉も相手の国の言語に変換されるんだ。スゲーよなこれ。まあ日本人の宇宙飛行士もいたんだけどな。


 ちょこちょこお隣さん? 同士になるしで差し入れを持って行ってからは、警戒されることはなくなったよ。

 

 しかし重力装置により擬似重力がある月に降りないと無理だと思ってたのに、宇宙でも飛翔できるとはな。魔結晶てどういう仕組みなんだろうな。雷撃だって撃てたしさ、まさに魔法だよな。


 そうそう、一度は経験してみたかった無重力状態を楽しんだよ。甲板でフワフワと浮きながら、星に囲まれてカレンと二人っきりで過ごした。カレンは終始上機嫌だったよ。やっぱ女の子なんだなと思った。もちろんそのあとはカレンと無重力プレイもした。凄いアクロバティックなプレイになったけど、地上じゃなかなかできないから新鮮だった。


 これはいいと思い、次の日はトワとも彼女の飛翔の魔結晶の練習も兼ねて無重力プレイを楽しんだ。当然トワは俺の動きについて行けず、終始俺に責められっぱなしで何もできず俺の大勝利だった。今ではトワにいいように翻弄されていたあの日々が懐かしく思えるよ。トワもベッドの上では俺に敵わないと認めたのか、従順になってきたしな。普段と違い甘い声を出すトワのギャップに萌えまくりだよ。


 そして新しく増えたオートマタたちなんだけど、なんだかんだで上手くやってる。

 

 

 

 ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

「ハイ、若鶏の唐揚げ。残さず食べなさいよね」

 

「ああ、ありがとうルリ」

 

 俺は長い黒髪をポニーテールにした、高校生くらいの女の子にそう礼を言った。

 

「あいよ! こっちはサラダな。また昨日みたいにボロボロこぼすなよ? チッ、水がまだ用意されてねえじゃねえか。モモ! なにやってんだよ」

 

「ああ、リカ。俺がさっきこぼしちゃったんだ。モモのせいじゃないよ」

 

 続けてサラダを持ってきた大学生くらいのショートカットの女の子に、気の弱いモモを怒らないように言った。モモはわざと俺に怒られようとミスをするからな。それはこの一ヶ月の間に思い知らされたよ。

 

「またモモを庇うのかよ。どうせアイツがわざとこぼしたんだろ? 籠絡されやがって」

 

「ははは、リカには感謝してるよ。いつも細かいところまで気を配ってくれてありがとう」

 

「なっ!? べ、別にそんなんじゃねえよ! 褒めてもあたしはモモやヨウコみたいに身体を許したりしねーからな! 期待してんじゃねえぞ! 」

 

「してないしてない。誤解だって」

 

「よく言うぜ。あたしの脚を舐めるように見てんのに気づいてんだよ。ルリの尻にレイコの胸もよ」

 

「そ、それはリカの脚が綺麗だからだよ。ルリとレイコもね」

 

「こんな作り物の身体を綺麗とかいってんじゃねえよ! ほんと変わったゴシュジンサマだぜ」

 

「リカ、レイコとヨウコを呼んでくるでやす。もう食べるでやすよ」

 

「ハイ! すぐに呼んできます! 」

 

「なんだかなぁ~」

 

 俺はトワの一言に背筋を伸ばして素直に反応するリカを見て、俺がご主人様なはずなのになと肩を落とした。

 

「ん……ご飯」

 

「ふふふ、トワの命令にはみんな素直に従いますね」

 

「フィロテス、それは間違いだ。俺以外の人の命令に素直なんだ」

 

 彼女たちはカレンを頂点に、フィロテス、トワという順番で絶対服従をしている。俺のいうことも最終的には聞くけど、全員が決して素直にではない。そのことから俺は命令系統の最下層にいると思われる。俺のために造られた子たちなのに……


 

 宇宙船と共に贈与された新しいオートマタたちとの生活も、もう一ヶ月になる。

 

 そうそう、宇宙船で働いてくれる彼女たちには名前を付けたんだ。

 

 黒髪のポニーテールで女子高生風の、なんとなく妹っぽい感じの子には『ルリ』。

 

 ショートカットの大学生のモデルって感じの元ヤンツンデレ設定の子には『リカ』。

 

 20歳くらいの垂れ目で、背が低くて爆乳のドM設定の子には『モモ』。

 

 この船の艦長であり、髪をアップにまとめて背が高くて色っぽい目をしている、スタイルバツグンの20代半ばくらいのドS設定の子には『レイコ』。

 

 髪をサイドでまとめ、形の良い尻を振りながら家事などを精力的にやってくれている人妻設定の『ヨウコ』。

 

 みんなかわいくて綺麗で魅力的な女の子たちだ。しゃべらなければだけど。

 

 ちなみにみんなのスタイルだけど、ルリは158cmほどで、Bカップだけど柔らかそうな大きな尻をしている。リカは165cmほどでルリより少し胸が大きくて足が長い。ほんとモデルみたいな体型だ。


 モモは150cmほどでHカップの爆乳だ。夜はこの胸で楽しませてもらっている。 いや、ミスをしたお仕置きで尻を叩いてくださいと言われて、仕方なく叩いてる時についムラムラして興奮しちゃってさ。モモがそんな俺の股間を見て、その大きな棒で叩いて欲しいとかいうもんだからつい……喜んで叩いたよ。本当に初めてかよと思えるほどスケベな子だった。

 

 レイコは170cmほどでDカップと俺好みのスタイルをしている。ドSじゃなかったら速攻手を出していたと思う。ヨウコは160cmでほどでEカップで肉感あふれる良い尻をしてる。もうさ、ヨウコは色気をプンプン出してて、ことあるごとに俺に胸チラやパンチラしてくるんだよね。さすがに誘ってることに気付いた俺は、カレンたちがいない時に我慢できずに格納庫で襲い掛かっちゃったよ。ちなみに人妻なのに処女でドスケベだった。 最高かよ。

 

 彼女たちと対面した翌日にエルサリオンの新王にクレームを入れた時に、平謝りの王がすぐに回収して再インストールをしますとか言ってきたけど断ってよかったな。


 彼女たちはカレンたちには驚くほど従順なため気に入られているし、このままでいいかなと思ってる。生まれた子の性格が気に入らないからって、書き換えるなんておかしいしな。彼女たちは人間でオートマタ族なんだし。

 

 俺もドMのモモへの調教と、ヨウコとの寝取りプレイを楽しんでるし。カレンの公認だし、トワに手を出してから抵抗がなくなったよ。この二人は最初からウェルカムだったのは、新王に感謝だな。もう二人ともエロくてさ、あっちの方の造りもトワに負けず劣らずで大満足してるよ。トワほど搾り取ろうとしないしな。そうは言っても秘薬とクリームが無ければ楽しむ間もなかったと思う。


 妹っぽいルリとツンデレのリカはゆっくり口説いていこうと思う。よく二人を観察してみたら、昔やった恋愛ゲームのキャラそっくりなんだよね。攻略法は知っているから時間の問題だ。しかしレイコだけは攻略法がわからないんだよな。ムチで叩かれるのは嫌だし……いい身体してんだけどな。なんとかSM抜きで口説き落としたい。

 

 俺は以前カレンたちにされた、ムチとロウソクプレイがトラウマになっていた。


 

「あら、先に食べてくださいって言ったのに、ご主人様はオートマタに気を使いすぎよ」

 

「ご主人様、カレン様お待たせしました」

 

 俺が彼女たちとのことを考えていると、キッチンからドSのレイコと人妻(設定)のヨウコがリビングにやってきた。

 

「あはは、ご飯はみんなで食べた方がおいしいからさ」

 

「フフフ、本当に変なご主人様ね。私たちのことをオートマタ族といって人間扱いしたり、本当に変わってるわ」

 

「ホント、ばっかみたい」

 

「ほんとだぜ。なんだか勘違いしちまいそうで怖いぜ」

 

「なんで? 巨人の国もドワーフの国も獣人やエルフの国だって、俺の側にいるトワを人間と認めたんだ。みんなもそうなって当然だろ? 」

 

 巨人族連合議長のバラムがトワをオートマタ族と認めてから、ハンザリオン共和国、ガユウ獣王国と立て続けに認める声明を出した。エルサリオンだけは相当揉めたらしいが、王と五人になった元老たちが押し切ったそうだ。

 

 まあそういうわけで、俺のところにいるオートマタだけは新しい種族と認められた。それは俺が強化することが前提になるけどな。それにエルフのオートマタ工場の世話にならなくても済むよう、彼女たちも自分の身体を修復する技能を持っている。もらった宇宙船にもそういった設備があるんだ。これはトワのためにエルサリオン前王が指示していたらしい。 前王は統率力に欠けていたけど、気が利くんだよな。新王は空回りしてるけどな。なんで似なかったのか……

 

「ご主人様……私たちがトワ様と同じだなんて。トワ様ほど優秀ではないわ」

 

「トワは俺の恋人であり護衛だからね。役割分担だよ。まあみんなにも結界は使えるようになってもらうけど」

 

「マジか! あの魔結晶とかいうやつをくれんのか!? 」

 

「ああ、そのためには脱いでもらわないといけないけどね」

 

「なっ!? ば、ばっかじゃねえの! 誰が脱ぐかってんだ! このスケベ野郎が! 」

 

「超ありえないんですけどぉ! 私をモモやヨウコみたいに無理やり犯す気ね! 絶対訴えてやるんだから! 」

 

「あの結界があれば船を守れるわね……この船の艦長としては欲しいわね」

 

「ゆ、融合って痛いんですか? それでしたら是非お願いします! 洗濯ばさみでは刺激が足らないんです! 」

 

「夫にバレないかしら……この間も胸にキスマークをたくさん付けられてしまったし……」

 

「ま、まあそのうちな。無理にはしないから」

 

 無理やり犯すとか……モモとヨウコとは同意の上だったんだけどな。俺はルリにいったいどんなケダモノに映ってんだ? しかしモモは洗濯ばさみじゃまだ不満だったのか……でもあれ以上はかわいそうでできないんだよな。

 

 俺としてはこの船の操縦や管理をする彼女たちには、船が破壊されても生き残れるようになって欲しい。そのためには最低限結界の魔結晶の融合をするつもりだ。そしてできればそのままエッチなこともしたい。

 

「ふふふ、毎日本当に賑やかで楽しい食事ね」

 

「ん……楽しい」

 

「さあ、みんな早く食べてお風呂の用意をするでやす。今夜のカレン様の衣装の用意も忘れるなでやす」

 

「「「「「はい! 」」」」」

 

「俺がご主人様なんだけどな……」

 

 俺はトワのいうことを素直に聞き、食事に集中する女の子たちを見てそう愚痴った。

 

「ん……みんないい子……よく働いてる」

 

「まあ確かにな。宇宙船のメンテナンスから家事やらよくやってくれてるよな。そろそろ南半球のどこかの島に降りて少し休ませてあげようか。俺も海で遊びたいし」

 

「賛成……バーベキューやる」

 

「いいですね。新しい水着も買いに行きたいですし、地上に行きましょう」

 

「ならオーストラリアの離島にするか。あの国の首相とは面識あるし」

 

 前から日本に居づらくなった時の候補として、以前オーストラリアとコンタクトしていた。そして小長谷たちEC中隊を連れて実戦訓練をした時に、わざわざ首相が俺に会いに来てくれたりした。

 

 ちょっと離島のビーチを貸し切りにしてくれと言ったらしてくれるだろう。

 

 恋愛ゲームでも海水浴に行くイベントがあった。ルリとリカとレイコとの距離を縮めるチャンスだな。

 

 岩場の影でヨウコとの浮気プレイもいいな。なにげに寝取りプレイは燃えるんだよな。ハマりそうだ。

 

 今回も楽しい海水浴になりそうだ。

 

 

 


 

 

 ―― アガルタ エルサリオン王国 王宮 六元老会議室 ルーミル・エルサリオン新王 ――

 

 

 

「火星に50体の戦艦級と巡洋艦級のダグルと、300体の母船級もだと? ギルノール伯爵。それは間違いないのか? 」

 

「はい。そのほか超巨大母船も火星にて確認できております。その大きさから、精霊神様のあの映像に出てきた魔王城ではないかと推測いたします」

 

「ま、魔王城だと……」

 

 私は宇宙警備局長の報告に動揺した。

 

 勇者様がおっしゃっていた通りになってしまった……いよいよ本格的に侵攻してくるというのか? であればレベル5以上のダグルが、かなりの数侵攻してくるはず。そしてその数年後には魔王級も……

 

 数千年前に侵攻してきた際の記録と違うのは、地上の人族の数が圧倒的に増えたからか。そのうえ我々がレベル4クラスのダグルを殲滅できるようになったからだろう。先遣隊クラスが全滅したから精鋭部隊がやってくるということか……

 

『戦艦級に巡洋艦級が50……これは艦隊戦でも相当な被害が出ますな……』

 

『恐らくそれら護衛は全てやってくるでしょう。母船級に関しては、これまでの傾向から200体というところでしょうか? 』

 

『それでも圧倒的な数だ。乗せているダグルが、レベル4以下のムカデ型とバッタや蟻と仮定しても40万匹だぞ? これまでの5倍以上だ。しかも見たこともない母船級がいる。恐らくレベル5のカマキリ型かそれ以上のダグルが乗っているはずだ』

 

『レベル5以上のダグルを乗せた母船……月では防ぎきれませんな』

 

『地球での決戦の方が勝算はある。地上に相当な被害が出るが、酸素のある地上の方が兵の被害を抑えられるだろう』 

 

「元老たちの言うとおり、月で戦うよりは勝算はある。しかしそれほどの数が地上に上陸し、しかもレベル5以上の個体が多数いるとなれば、次元の穴をくぐり抜けてくる可能性もある」

 

 地球で全てを迎え撃つのは危険だ。できれば月で押しとどめたい。そのために先祖が月を基地化したのだから。


『しかし月でその数を迎撃するのは危険です。今回の侵攻で終わりではないのです。ここで兵を消耗すれば、次の侵攻に耐えられません』

 

『かといってアガルタを危険にさらすわけには……』

 

『……言いにくいのだが、月の軍の中から決死隊を募り、時間稼ぎをしてもらうほかないと思う』

 

『月に設置した大型エーテルタンクを食い荒らされたあとの囮か……』

 

『確かに月の地下基地でゲリラ的に戦えば、地上に侵攻してくる数を調整できるが……』

 

「月の決死隊は全滅するだろうな……やむを得ぬか……各国と調整しよう……」

 

 あまりにも圧倒的な数に、私は月での迎撃を断念した。すまない月の勇敢な戦士たちよ……アガルタを守るためにはこうするほかないのだ。

 

『王のご決断に敬意を……』

 

『地上には勇者様がおられる。迎撃することは可能でしょう』

 

『うむ……だが勇者様が月に行ってくださることはできないのだろうか? 』

 

『王が新型宇宙船を贈られたと聞きました。圧倒的なまでの力を持ち、魔王をも倒した勇者様であれば……』

 

『皆、勘違いするな。アリエル王妹は許されたが、我らエルサリオン王国は許されていないのだ。ここで勇者様を利用しようとすれば、もう二度と関係を修復することは不可能だ』

 

「イシル公爵の言うとおりだ。勇者セカイ様と大英雄カレナリエル様からアリエルの事はお許しいただけたが、我らは許されていない。我々は勇者様と聖母様のご意志を無にしたあげく、仇で返したのだ。ハイエルフたちの地位の復権もできないまま頼れば、今度はほかの種族に叩かれるだけでは済まないだろう」

 

 我が義妹のアリエルは、おとなしく謹慎していたことと、ダークエルフであるイシル公爵の長子と婚姻が決まったことにより許された。しかしエルサリオン王家の罪が許されたわけではない。国外に追いやったハイエルフたちを呼び戻し、相応の地位を与え安心して暮らしてもらって初めて勇者様にお許しを得る機会が訪れるだろう。

 

 なにより皆には言えないが、私は勇者様のお怒りを買ってしまった。やはりクーサリオン公爵の忠言通り、勇者様の好みを直接聞いてからオートマタをお贈りすべきだったか……おのれ技師たちめ! 何が勇者様の特殊な趣向を把握済みの我らにお任せくださいだ! トワ殿が寵愛されていることにまんまと騙された。まさかあれほどお怒りになられるとは……技師たちを左遷したいが、それをすれば元老たちに知られる。そうなれば袋叩きにされかねん。ただでさえ王家の威光が地に落ちているというのに、これ以上落とすことはできない。このことは無かったことにしなければ……

 

 しかしまさかこれほど早く即位することになるとはな……月で戦っていた時の方がどれほど気が楽だったか……

 

『では月基地にて決死隊を募り、遅滞戦術を行うということで』

 

「ああ、勇者様に頼らず我々の手で倒さねばならない。アルガルータのご先祖様たちのようにな」

 

 アグラリエル王家最後の王。レメリオ・アグラリエル様のように私も先頭に立ち戦う。

 

 助けなければよかったと勇者様に言われた我々にできることは、このアガルタに住む全ての民を守ることのみなのだから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る