第53話 面会の打診

 



 《そ〜れ! 》


 《はいっ! 森高2尉お願いします! 》


 《まかせて! ハッ! 》


 《うわっ! 高っ! 》


 《若草2尉! 行きましたよ! 拾ってください! 》


 《ま、まかせて! きゃっ! 》


 《コケた……》


 《あっ! 若草2尉水着が! 》


 《え? きゃあぁぁぁ! 》



「いいおっぱいだ……」


 俺はビーチバレーでボールを拾おうとして盛大にコケ、水着がズレて丸見えになった若草2尉の推定Cカップの胸を見てボソリと呟いた。


「ああ……い、いや! 俺は見てないぞ!? 」


「そういうことにしといてやるよ。女ばかりの部隊の隊長も大変だな」


 隣のビーチチェアで顔を背けている小長谷にそう言い、手に持っていたビールを口に運んだ。


 いいおっぱいだったな……本人もこっちを見てあんなに恥ずかしがっていてそそるはずなんだけど……まったくムラムラしねえんだよな……


 こんなに女の子がいっぱいいるのに、ポロリも今回が初めてじゃないのに……俺の心はまるで賢者のように静かなままだ。


 それもこれもすべてトワのせいだ。3日前にトワと最後までしてからというもの、毎日トワに限界を超えて搾り取られている。この調子でいけば、あと2ヶ月足らずで精力剤の在庫がなくなってしまう。そうなればその先にあるのは……死。


 あの精力剤はアルガルータのダークエルフの王族に伝わる秘薬だ。アレは聖地で採れる素材で作られているから、もう二度と手に入ることはないだろう。似た物がエルサリオンに無いかルンミールに聞いてみるかな。エルフの王族や上位貴族は人工授精しないって言ってたしな。秘薬ほどではなくてもそこそこの物は持ってそうだし。


 いずれにしろこのままでは不味い。トワは初めての感覚にハマってしまいすごく積極的だ。覚えたてというのもあるんだろうけど、どうやら接待する相手を悦ばせるために体内の感度は高めに作られているらしい。その証拠にカレンより乱れるし大きな声も上げる。俺は悲鳴を上げてるけどな。


 トワの中は何か生き物が住んでるとしか思えない。カレンもフィロテスも俺があまりにもあっさり果てるもんだから、横でビックリしていたくらいだ。俺だってやられたままではいられないと、トワを激しく責めたりしたさ。でも全て返り討ちに遭って限界まで搾り取られた。おかげでビーチで自衛隊の女の子たちを見ても何にも感じ無くなった。なんか人生の最大の楽しみを失った気分だよ。




「若草2尉は身体強化の魔結晶を使いこなすのに苦戦しているな」


「お前や森高2尉が異常なんだよ。普通は融合して3日目なんてあんなもんだ」


 俺は視線の先で今度は高く飛び過ぎてバランスを崩し、地面に落ちる若草2尉を見ながら小長谷にそう返した。


 そう、俺はおとといカレンに頼まれて、森高2尉と若草2尉に3等級の身体強化の魔結晶を融合してあげたんだ。3等級程度ならいくらでもあるし、小長谷に既に融合してるからな。カレンが死なせたくないと思ったのなら、生存率を上げるために融合してやろうと思ったわけだ。


 俺が2人に魔結晶を融合してあげると伝えた時は、2人は体内に魔結晶を埋め込むことに少し不安を覚えつつも是非お願いしますと言って受け入れた。小長谷がオーストラリアで、たった1人で複数体のインセクトイドと戦っている姿を見てるからな。同じ動きができるようになるかもしれないと思ったんだろう。


 魔結晶は身体検査でバレて科学者のモルモットにならないよう、小長谷と同じく足の裏に融合した。それでも入院などすることになったら見つかる。その時は俺が魔結晶を調べることを禁止すると言っていたと、政府に伝えるように言ったから大丈夫だと思う。俺のせいで彼女たちがモルモットにされたら申し訳ないからな。


 そういうわけで3等級の身体強化の魔結晶を2人に融合したわけなんだけど、森高2尉は小長谷と同じでセンスがいい。それに比べて若草2尉は、俺が初めて身体強化の魔結晶を使った時と同じで使いこなすのに苦戦している様子だ。いや、それが普通なんだよ。融合して数日で3倍になった筋力を扱うコツを掴める方が異常なんだ。


「俺も苦労したさ、森高2尉は昨夜ここでコツを教えたからな。その成果だろう」


「オイ……お前今なんてった? 」


 昨夜ビーチで? 若草2尉がコツを覚えていないということは……まさか2人っきりでか!?


「あっ……いや……その……まあなんだ。航になら言ってもいいか。ここに来て4日目の夜に森高2尉……千夏に告白されてな。付き合うことになったんだ。内緒だぞ? 隊長として不味いからな」


「なっ!? 森高2尉とお前が!? そんな……森高2尉と……美女と野獣だと? 」


 そんな……俺の巨乳と小長谷が……くっ……エーテルを使えるようにする時に、身体の隅々まで知った子が小長谷に……なんか寝取られた気分だ……


「ははっ、これも航のおかげだな。お前のおかげで遠い部隊にいた彼女と出会えた。そのうえ彼女にまで身体強化の魔結晶を融合してくれて感謝してるよ。ありがとうな航」


「ぐっ……し、幸せにしろよな……魔結晶のことは気にすんな。カレンが気に入った子には死んで欲しくないからな。エーテル保有量が増えれば、お前と彼女には再生の魔結晶も付けてやる。だからインセクトイドを殺しまくってエーテル保有量を増やすんだな」


 俺はいいなと思っていた子を小長谷に取られた悔しさをぐっと堪え、親友の幸せを願った。


「再生か……骨折が一瞬で治ったのには驚いた。そんなものまでくれるなんて恩に着る」


「アホ、俺とカレンのは1等級や特級だ。3等級じゃ骨折が治るまで数時間は掛かるし、エーテルもかなり消費する。あんまりアテにするな。死に難くなる程度だと思っておけ」


 高等級の物を融合してやりたくても、そんなのはエーテル保有量が数万は無いと扱うのは厳しい。小長谷が今の倍のエーテル保有量になっても3等級がやっとだ。3等級なんて致命傷を重症にするくらいのもんだ。骨折を一瞬で治すには、高等級の魔結晶と俺やカレンほどのエーテル保有量がなきゃ無理だ。


「なるほど。そういうものなのか。ならばやはり海外遠征の回数を増やすべきなのかもしれん。また航に頼むことになりそうだ」


「カレンとトワが楽しそうだからな。あんまり遠くじゃなきゃいいさ。次は冬にやってバカンスは温泉がいいな」


 浴衣姿の若草2尉や女の子たちと卓球をやるのもいいな。あわよくば混浴なんかできたら最高だ。


「その辺は任せてくれ。防衛省も政府も外務省までもが、今回の遠征の成果に大満足しているそうだ。部隊の能力が格段に上がったうえに、オーストラリア政府に大きな貸しを与えられたからな。今回の遠征の成果を知った中国やロシアや中東。そしてインドにヨーロッパから是非EC中隊に来て欲しいとの問い合わせが殺到しているらしい」


「ふーん、中国とロシアは要注意だな。この二国とアメリカには俺は行かない。トラブルになるのが目に目えてるからな」


 大国はほっとけばいいんだよ。助けてたら恩を仇で返してくるのが目に見えてる。アメリカと共同で国際救援軍を作ろうとか言い出したりな。そうして小長谷たちを前線に立たせて、その強さの秘密を探ろうってなるに決まってる。その時に部隊の子が何人か行方不明になる可能性もある。そんな国にエーテルのことを知られたら大変だ。いずれ知られるとしても、それはEC中隊が師団規模になった時くらいじゃないとな。


「確かにな……わかった。政府には言っておくし、事前に必ず航に相談する」


「せいぜい他国に徒党を組まれて利用されないようにな。お前が守るのは日本だ。世界じゃねえからな? 俺みたいになるなよ? 」


 世界のために戦ってカレンを死なせるとこだった俺みたいにな。


「航……ああ……日本を守ることだけを考える。他国を救いにいって一番守りたい人を守れなくならないようにな」


「それでいい。世界を救う勇者だ英雄だなんてやるもんじゃねえよ」


「ははは、そんな力は俺にはないから大丈夫だ」


「今はな。もっと強くなったら勘違いしだすもんだ。とにかくまずは森高2尉を守れるようになるんだな」


 《ワタルさーん! ボートに乗りましょう! 》


「ああ! 今行く! よっこらせっと……んじゃちょっくら恋人たちのとこに行ってくるわ」


「お、おい! フラついてるぞ? 大丈夫なのか? 」


「大丈夫だ。飛んで行くから……」


 くっ……足に力が入らねえ。


「それが航が昔から望んでいたハーレムの結末か……あんな美女たちに囲まれ羨ましい気持ちもあるが、維持をするのも大変そうだな」


「フッ……正直ナメてたのは認める。でも天国なのは間違いない。俺は維持してみせる。いや、まだまだ増やしてみせる」


「そ、そうか……死ぬなよ? 」


「まだだ、まだ終わらんよ……じゃあな」


 俺は小長谷にそう言って飛翔の魔結晶へとエーテルを流し、バナナボートの上から手を振るフィロテスとカレンたちのもとへと向かった。


 どうやらホテルの女性インストラクターが乗るジェットスキーに、バナナボートを引っ張ってもらうようだ。しかしトワだけなぜか後ろ向きで最後尾に座っている。怖くないのかね?


 俺はそんな彼女たちがまたがるバナナボートへと飛び乗り、カレンとフィロテスの間に挟まれながら水上ドライブを楽しんだのだった。




 ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢




「あ〜食った。あとでみんなでお風呂に入って、今夜はカレンと2人で寝たいな。いいよな? 」


 俺は部屋で食事を終えてソファーに寝転がりながら、向かい側でフィロテスと食後のコーヒーを飲んでいるカレンへと話しかけた。


 今日も3人となんて無理だ。フィロテスと恋人になって毎日したかったのは認めるが、いい加減一人ずつにしないと死ぬ。


「ん……仕方ない……今夜は私が満足させてあげる」


「では私はお二人のサポートを……」


「いいから! トワは今夜はいいからな? 俺は今夜はカレンと2人っきりで寝るからトワは自室で休んでてくれ。毎日悪いからな」


 俺は当然のように参加しようとするトワに、柔らかく拒絶した。


「私は特に負担はございやせん。ご主人様が私の中で果て、その都度悦ぶ顔を見れるのは本望でやす」


「口もとが笑ってるぞ。変な笑い方ばかり練習しやがって……毎日トワの相手してたら死んじまうんだよ。察してくれ」


 あのイタズラっぽい笑いは、カレンにそっくりだ。絶対カレンに教わったな。


「昇天するというやつでやすね? 男性は本望だと聞きやした。ご主人様も昇天するのは望んでいるのでは? 」


「本当に死ぬことなんて望んでねえよ! お前もメイド兼俺の恋人なら少しは俺の身体を心配しろって! 」


「恋人……仕方ないでやす。ご主人様の体調が整うまで待っていてやるでやす」


「ん? やけに物分かりがいいな。まあそういうことだ。フィロテスは明日の最終日に一緒に寝ような? 」


 俺は急に物分かりの良くなったトワに首を傾げつつも、カレンの隣に座っているフィロテスにそう声を掛けた。


「え? は、はい……嬉しいです」


「……フィロテス悩みごと? さっきから静か」


「そういえば食事中もずっと何か考えごとしてたな。夕方にルンミールと話していたことと何か関係があるのか? 」


 今も俺とトワとの会話中も心ここに在らずといった様子だった。思えば夕方にルンミールから通信が来て話してからこんな感じだった気がする。何か面倒なことでも頼まれたか?


「はい。その……実は先日の件で我が国の王が、ワタルさんと会って謝罪したいとおっしゃってまして……必ずお二人を会わせられるようにして欲しいと局長から頼まれたのです」


「あれだけの事をしておいて王宮に来いと? 臣下の貴族も抑えられないような奴のとこになんか、危なくて行くわけないよな。だいたい俺はもうエルサリオンには行く気はねえし。王様には用があるならお前が来いと言っておいてくれ」


 王宮にどんな大規模な罠があるかわかんねえのに行くわけねえし。謝罪したいなら謝罪したい相手を呼びつけるんじゃなくて、テメエが来いってんだよ。それが誠意ってもんだ。まあ一国の王が個人に詫びに来るなんて有り得ねえけどな。しかも地上の世界にとかまず無理だろ。


「ん……用があるなら王が来るべき」


「よかったです。では日時はいつ頃がよろしいですか? 王は明日にでもこちらに来れると言っています。王の護衛も最小限にするそうですので、できれば人気の少ない場所にしていただけると助かるのですが……」


「は? え? 王様が来るの? 王宮を出て地上に? マジで? 」


 マジかよ! 一国の王が王宮を出て個人に詫びにくる? そんなのあり得ないだろ……


「これは予想してなかった……」


「はい。もう臣下の貴族には任せられないと。六元老の反対を押し切り王自らが謝罪に来ることに決まったそうです。私も最初に聞いた時は驚きました。しかしワタルさんの許しを得るためには、それくらいはしないと誠意は伝わらないとも納得しました」


「マジかよ……さすがにそこまでされたら会わないわけにはいかねえよな。わかった。明後日自衛隊が帰ったら、深夜にこの島の沖の上空でそっちの宇宙船を俺たちが訪ねるよ。そこで王様と会おう」


 さすがにホテルに来てもらうわけにはいかないだろうしな。こんなこと自衛隊や政府にも言えない。知ったら大騒ぎどころじゃなくなるだろうし。極秘裏に会うしかないだろ。


 しかしまさか王自らがが来るとな……これで馬鹿王女のことは水に流すしかないな。まあフィロテスの故郷だ。完全に縁を切る気はなかったからいい機会といえばいい機会か。


「仕方ない……断れば敵が増える……フィロテスの家族に迷惑が掛かる」


 あ〜確かに王自ら詫びに行くというのにそれを断れば、プライドを傷つけられた貴族たちが暴走する可能性もあるか。俺に手を出せないなら、側にいるフィロテスへ八つ当たりも考えられるな。エルフならやりそうだ。まあそんなことをしたら、俺がそいつらを滅ぼしに行くけどな。


「カレンさん……ありがとうございます。では明後日の深夜に王にお越しいただくようにセッティングを致します。当日は情報局の総力を上げて警備を致しますのでご安心ください。いざとなれば私がワタルさんをお守りします」


「ははは、大丈夫だよ。さすがに王がいるとこでヘタなことする奴はいないだろう。なにより俺たちが単独でアガルタに行けることはわかってるだろうしな。次に何かあれば、フィロテスの家族を確保したのちにエルサリオンの軍事施設と王宮を全部破壊するから」


「わ、わかりました。そう伝えておきます」


「さて、じゃあお仕事の話はこれまで。ここからは恋人の時間だ。一緒に風呂に入ろう」


 俺は両手をパンっと叩いて仕事の話をお終いにして、向かいに座るフィロテスとカレンの間に腰掛けた。そして2人の背中に手を回し、Tシャツの上から乳を揉みつつ風呂へ行こうと誘った。


「あっ……は、はい……お背中を流します」


「んっ……お風呂入る」


「よしっ、それじゃあさっさと脱いで行こうか」


 俺はその場でカレンとフィロテスとトワのショートパンツとTシャツを脱がした。そして3人とキスをしながら下着も脱がし、俺が着ていた服も同時に脱がしてもらい浴室へと移動した。浴室ではカレンとフィロテスとトワの身体を、俺の両手と元気棒を使って中も外も満遍なく洗ってあげた。それはもう3人を並べてじっくりねっとりとね。


 そして良い汗をかいて流した俺たちは風呂から出て、みんなでホテルの遊戯施設に遊びに行った。そこでは自衛隊の女の子たちもいて、彼女たちと一緒にお酒を飲みながらビリヤードやダーツで遊び楽しい夜を過ごした。


 遊び疲れてお酒も入りほろ酔い気分になった俺は、部屋に戻りフィロテスとトワとおやすみのキスをしてからカレンを寝室に連れて行った。そしてベッドで久しぶりに2人きりで愛し合ったのだった。


 しかしエルサリオンの王が地上にか……いくら謝罪するためとはいえ、さすがに大袈裟過ぎな気もする。何か他の目的があるののは間違いないだろう。月での戦争の支援か魔結晶か、もしくはその両方か。世界のためとかなんとか言われて、また利用されないようにしないとな。俺はカレンとフィロテスとトワと、身近な人間だけを守れればいい。世界なんか知ったことか。


 俺は上に乗り繋がったまま眠ってしまったカレンを隣に寝かせながら、エルサリオン王の来日の目的が謝罪だけではないだろうと考えていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る